よくビジネス書などでは、何かを列挙することはよくある。「~についてのポイント5つ」「~するための 10 のルール」みたいな感じで始めるあれだ。

例えば、「ぐっすり眠る3つのコツ」「起業の5つのルール」のようなものは分かりやすい。その後に普通に列挙していけばいい。

問題は、否定の言葉をタイトルにしてしまうことである。例えば「映画館で鑑賞中にやってはいけない3つのこと」のような感じだ。列挙に先立って、こうした否定のタイトルは避けるべきである。以下を見ていただきたい。

「映画館で鑑賞中にやってはいけない3つのこと」
・おしゃべりをしない
・他店の飲食物を持ち込まない
・前の席を蹴らない

そう、否定のタイトルを付けた上で、列挙内容にまで否定文にすると、例えば「おしゃべり」がダメなのか「おしゃべりをしないこと」ダメなのか、パッと読んだ感じ分からなくなる。

こういう文章は、プロの物書きの文章でも時々見かける。書いている側としては理解しているから書くんだろうけど、読む側になると混乱してしまう。

また、これは「列挙」に限らない。「妊婦がしてはいけないのはこれだ。重い物は持ってはいけない」のような文の連続も、分かりにくいでしょ。

さらにややこしいのが、否定だけでなく、否定に準ずる言い回しでも同様である。「~についての間違い5つ」のような「間違い」は否定的な語なので、その後に否定文を列挙すると読み手を混乱させる。「間違い」の部分は「デメリット」「誤り」「誤解」「都市伝説」・・・など、結構いろいろな言葉が否定的意味を含むので、十分に注意が必要だ。

要するに、否定が入れ子構造になっているのが分かりづらさの原因だ。否定を文、あるいは段落間で構造を持たせると間違いの元である。それを避けるには、肯定文で書く、あるいは否定は単独で用いることだ。

読み手が単に理解の上で引っ掛かるだけでなく、全く逆の意味にとられてしまうことだってありうるから気を付けよう。