大学の学部生の頃、特に影響を受けたのが評論家の立花隆さんの本だ。ちょうど多感な時期に熱心に読んでいたので、私の文章の文体や思想に現在でも大きな影響を受けている。

立花さんの本のどれかに、取材をする際は取材相手の著書はすべて読むのは当然のことだと書いてあった。すでに本になっているのに改めて取材で聞くのは「本に書いてあるでしょ」と言われても仕方がない。いい人ならちゃんと答えてくれるだろうけど、面白い話は引き出せないし、話の質がどんどん落ちていく。取材対象の著書も読まずに取材するなんて「あり得ない」ことである。

こういう趣旨のことを立花さんの本から学び、以来(取材をすることは滅多にないけれど)、講演会に参加する際には講演者の本はなるべく全部読むようにするし、読書会に参加するにしても関連書籍はなるべく読む。そして今度自分主催の読書会にゲストを呼ぶんだけど、その際は当然のごとくゲストの著書は入手できる限り全部集めて読んだ。

話を聴きに行きさえすれば、向こうが勝手に話してくれる、と考えるのは受け身の態度である。受け身でいる限り、話の内容なんてすぐ忘れてしまう。講演会程度ではまあいいかもしれない。でも、取材をしたり、自分でゲストを呼んだりするなら、著書を読むといった準備は当然するべきことだ。