[読書メモ]『理想の図書館とは何か』
p18
図書館の組織原理とは、パッケージされた知識=書物を社会的な知識ストックとして共通利用するために、組織的なコレクションをつくりこれを保存すること、コレクションへの容易なアクセスを可能にするために分類や目録の仕組みを開発すること、これらの操作を担う司書を配置することである。
p26
1998年に開館した愛知県豊田市図書館は、トヨタ自動車および関連企業から入る豊かな税収を背景にスペース、蔵書数、資料購入費などの点で全国的にみても突出した贅沢さを誇っている
p37
誰でも利用できるのは資料だけでなく、図書館の施設そのものである。
p42
大英博物館閲覧室が先駆けとなるような、市民が誰でも無料で自由に利用することができる近代的図書館は、英米や北ヨーロッパから出発して世界にひろまった文化装置である。
p42
電子ネットワークで知を容易に媒介することが可能になった今となっては、こうした建物と資料をもって人を迎え入れる仕組みがどのような意味で人を迎えられるのだろうか。
p44
六本木ライブラリーも、都心の立地条件と個室スペース、そして 24 時間制の司書によるサービスが提供され、そして共通のイベントに参加し交流する場が用意されている。これらのサービスに対価を支払う人々が現れたという事実に対して、わが国社会の階層分化が進んでいるという見方をすることも可能であろう。
p53
今、日本社会はこのような「無駄」に投資する余裕を失っている。
pp82-83
図書館の電子化を著しく進めてきたのが、マスデジタライゼーション・プロジェクトと呼ばれるものである。そのなかでもとくに協力に進められてきたグーグルブックスは、英米のいくつかの有力大学の蔵書を最終的には全部テキスト化しようというプロジェクトである。
p89
書店、それも一定規模以上の書店に入ると何かワクワクする感じをもつ人は少なくない。未知の新しい本と出会える期待感がそれをもたらすのであろう。しかし同じ期待をもって公共図書館(以下、図書館とする)を訪れても、そうした出会いはなかなか得られないことが多い。実際、自治体財政の逼迫(ひっぱく)が理由で資料購入をかなりの程度減らされているために、蔵書の魅力が減じているとも言われる。だが蔵書の魅力とは何だろうか。/そもそも図書館に書店のワクワク感を期待するのは間違いであり、出版物のフローを担う場である書店と、ストックを担う場である図書館とは異なった存在であると考えられる。人は書店にて自分が最も欲しいものを手に入れるのであり、公共機関としての図書館には、市場原理がもたらす消費的な原理とはいったん距離を置いた文化的な目的に基づいて経営を行うことが要求されるはずであろう。そこには明確な文化的目的意識が必要になる。
p90
図書館が学術的な執筆活動やジャーナリズムの仕事を支えているということはあまりしられていないのが事実である。
p126
習い性となって、どこかに出かけたら地元の図書館を見学することにしている。
p106
図書館の生命線は資料の充実にある。
p107
図書館は今自身が最も支持している公共施設の一つである。その秘密は、ずばり知的雰囲気と私的空間の組み合わせで、きわめて都市的なアメニティが実現していることである。
p185
これらの国々の最近の図書館に共通した特徴としては、第一に都市空間における文化装置として、アクセス性を向上させ、建物・内装をオープン化し、ユニバーサルデザインを採用するなど利用しやすさを建築に配慮するなどの「場所としての図書館」を強く意識している。これはデジタル図書館に対するアンチテーゼとも言える。