[読書メモ]『吃音の世界』
p28
日本語ではかなりどもるけれど、英語ではどもらないという人もいます。
p30
吃音は 90% 以上、最初の一音で生じます。しかし、冒頭に「あのー」「えっと」と繰り返すと、そのうちに「このタイミングなら言葉が出る」という瞬間が訪れ、その一音が出せるのです。
pp35-36
どもるのは悪いことだと思い込むことからすべてが始まっていると私は考えています。この悪循環を断ち切るために必要なのが、繰り返しますが次の言葉なのです。/「どもっていてもいいんだよ」/「吃音を隠す努力」をすると、一見、吃音が目立たなくなります。しかし、それを続けていると「どもらないように話す」ことが会話の一番の目的となっていきます。「伝えたい内容を伝える」という本来の目的からかけ離れてしまいます。そして、結局、何の解決にも至らないのです。
p85
吃音があることで、マイナスに感じることを最小限にしたい__それが私の臨床姿勢になっています。
p112
吃音のある人は、自分で話し始めのタイミング(内的タイミング)を作り出すのは苦手なのですが、周りの人のタイミング(外的タイミング)に合わせて話すと、スムーズに発声しやすいことがわかります。
p121
吃音には適応効果(学習効果)があると言われています。つまり、同じ文章を何回も読むと吃音が軽減していくといったことです。
p122
新しい環境、たとえば就職したてのころは、使い慣れていない言葉の使用が増えるため、吃音が増えるケースが多々あるということです。
p129
吃音を隠す工夫や努力によって、周りに気づかれないようにすることはできたとしても、隠そうとすることで行動が制限されるという弊害が生じ、結果、別の問題へとつながっていく場合もあります。
pp129-130
カミングアウトによる効果は、ただ周囲の人に自分の吃音のことを知ってもらうだけではありません。それはときに、本人の思い込みを解き放つことにもつながります。/「人前では、絶対吃音を見せてはいけない」/と、強迫観念に近い思いを持っている状態から、/「吃音が出たとしても、言いたいことを言うことが大切だ。また、人は自分が思っているほど気にしていない」/と思えるきっかけになることもあるのです。
p141
かつて日本では、吃音について家庭内では話をしてはいけないとする独特の考え方があったからです。しかし現在、吃音についてはむしろ積極的に家庭内で話すべきだという考え方に 180 度の転換をとげています。それは、吃音について家で触れないでいると、親の心配が晴れないだけでなく、吃音のある本人の悩みも解決されないからです。つまり、本人の悩みが放置されたまま、一人でその悩みを抱え込む状況に陥る可能性があるのです。
p189
吃音者の多くは、孤独感に苛(さいな)まれています。
pp192-193
社交不安障害について注意しておかなければならない点の一つは、自殺企図率がうつ病よりも高いことです。うつ病単独の自殺企図率が 1.1% なのに対して、社交不安障害の自殺企図率は 2.6% に上ります。さらに、社交不安障害にうつ病を合併するとそれは 7% にまで増加するとする報告もあります。
p201
発達障害などがある子どもが、成長してから他の人と円滑にコミュニケーションが取れるようになるために「周りの大人が援助の仕方を学ぶ」、インリアル・アプローチと呼ばれる手法があります。
p202
会話や遊びの主導権を子どもに持たせる。
p202
相手が話し始められるように待ち時間を取る。
p204
さて、「医学モデル」と「社会モデル」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。医学モデルとは、障害者が直面する困難や社会的不利はその人個人に問題があるとする考え方です。一方の社会モデルとは、障害者が直面する困難や社会的不利は社会の問題だとする考え方です。つまり、前者では障害を「個人の問題」として捉えるのに対して、後者では「社会の問題」として捉えています。
p207
なんとしても自分の口で言いたい、メモを差し出すなんて恥ずかしい、という人もいますが、肝心なのは相手に内容を正確に伝えることです。それほどこだわる必要はないのではないかと私は思っています。
p209
成人の吃音のある人が一番困難に感じているのが電話です。