[読書メモ]『大根の底ぢから!』
- 読書
- 2019/09/16 Mon 06:33
p4
なにかを飲み食いすることは、じつのところ人知を超えたものに支配されていると言ってもよい。
p23
どうも料理というものも、つきつめていくと、だんだんと単純なもののおいしさに行き着くような気がする。
p98
要は工夫しだい、頭の使い方が大切である。
p124
人間の味覚には案外と大ざっぱなところがあり、たとえば、「甘い」という感覚は、それだけで人を麻痺させる力がある。だから、なんでも甘味があると、それがすなわち「旨い」と思ってしまう人が多いのである。考えてみると、元来、ウマイとアマイとは、同じ言葉から派生した兄弟関係にあると言ってもよいのである。
p129
日頃は酒ばかり飲んでいて奥さんの料理も観察せず、板前の手先も見ず、ぼんやりと何十年も過ごしてきて、さあ急に料理教室などに通ったとて、どうなるものでもない。
p161
イギリスの6月は、まさに地上の楽園で、日は長く、空気は冷涼に乾いていて、つねに微風が頬をなでて過ぎ、山野は新鮮な緑に蔽(おお)われて、百花まさに繚乱、ひとたびこのイギリスの6月を味わった人は、終生忘れることがないであろう。
p201
鯛(たい)の兜(かぶと)とくれば、これはもう親の敵でも討つような心構えで、脳髄から顎周りのトロリとしたゼリー質の所やら、どこからどこまですっかり吸い尽くしてしまうのであった。