[読書メモ]『フェルメール全点踏破の旅』
- 読書
- 2019/08/17 Sat 06:18
p13
30 数枚ならば、それを全部見ればフェルメールが理解できるのではないか、という気持ちになることも確かなのだ。
p32
美術史には来歴という言葉がある。その作品が、どんな経路を経て現在の持ち主のところへ辿り着いたかを示したものだ。
p112
この絵の前に立ってまず思うのは、手紙を読むという単純な行為がなぜこんなに心を揺さぶるのかということだ。
p124
小説と映画の大ヒットで、女中モデル説は、一部で疑似事実(ファクトイド)になってしまった感がある。
p125
[17 世紀の肖像画は]相手から依頼されてはじめて成立するものだったという点だ。
p130
最初に《デルフトの眺望》の実物を見たとき、それまで画集で見ていた絵と非常に印象が違っていて、驚いたことを覚えている。だからマウリッツハイスには、この1枚だけでも見に行く価値がある。この絵はそれだけ複製を作るのが難しいということなのだろう。印刷物では、全体的に黄味がかっていたり、空が白っぽかったりする。しかし、本物は、一言でいってしまうともっと爽やかだ。絵の手前部分にある灰色の雲のすぐ下には、すっきりとしたきれいな青空が広がっている。
p160
2000 年はイギリスの美術行政にとっては画期的な年だった。国営宝くじの収益金を国民に還元するという目的で大規模な芸術基金が作られ、それが現代アートの美術館であるテート・モダン開館の大きな推進力になった。この基金で、大英博物館も大規模な改修工事をしたし、ケンウッドのような小規模な美術館も改修された。そういった美術館がいっせいに開館・再開館した 2000 年は大きなお祭り騒ぎで、ロンドンに観光客がどっと流れ込んだ。こうして、ロンドンの美術館はひとまわり洗練され、今でもその活気は衰えていない。
p201
オランダの風俗画はサイズが小さいので天井が高く大きな展示室には似合わない。そのために、オランダ絵画用に小さな部屋を用意している美術館もあった。
p247
信仰の種類が何であろうと、何か自分よりずっとレベルの高い存在を認め、それに対して技術を尽くして捧げるように作った芸術品には存在としての強さがあるということだ。