名前に関してはうちは1ヶ月ほど前にほぼ確定していた。私がこだわったのは、「あまり親の思いを込めすぎないこと」と「バカっぽい名前にしないこと」だ。思いを込めすぎると親子双方にとって重荷になる。ピンとインスピレーションが来た名前、ぐらいの勢いでいいと思うんだ(実際いろいろ考えたけど、結局は最初に思いついた名前に確定した)。またキラキラネームみたいなバカな名前にするのはヤンキー臭くて生理的に嫌なので正統派の名前にしたかった。

結局夫婦でまとまらなかったので、お互いの好きな漢字を1文字ずつ使った名前にした。やや漢字が難しい気もしたけど、悪くないと思う。

出産前から、ワイフが命名書のようなものを作りたいと言ってきた。私はそういう前時代的なものは嫌だと思ったけれど、パソコンでデザインすれば私の DTP スキルが活かせると思ったので作ることにした。

Pinterest などのおシャレな画像を元に Photoshop、Illustrator 等のアプリケーションや iPad 駆使して作成。イラスト部分はワイフが描いたものを取り込んだ。出産直後に iPad で日付や体重等を手書きで記入し、写真を挿入すれば「速報ニュース」を作れると気付いた。そんなわけで出産後に、実家の家族やらにはそうやって自作した命名書の画像を送って出産を伝えた。

ここで紹介できないのは残念だけど、我ながらオシャレで素敵な命名書ができた。

産婦人科はまあ悪くない病院だったが(正確には病院ではなく「診療所」)、システマティックじゃない部分があった。患者にとって不親切設計がちょくちょくあった。

出産に向けた説明が煩雑で、聞いている側としては混乱した。病院側はちょうどお産が立て続けにあって(同じ日に他に4件あったみたい)、忙しそうだったし、そもそも患者側は出産を控えてソワソワしていたり、場合によっては動転していたりして、病院側の話を十分に理解できない。簡単な冊子のような説明書、手順書を用意すべきだ。

出産前に陣痛間隔を計測することが、出産を迎えるかどうかの指標となる。家で痛みの間隔を調べて病院へ連絡するのが一般的な出産入院の第一歩だ。でも、いちいち陣痛間隔をメモするのは大変だ。それでなくても痛みでぼんやりしている。だから、陣痛間隔を自動計算できるアプリを FileMaker で作ってみた。

陣痛だけでなく、出血や破水のあった時刻を簡単に記録できるようにしたし、陣痛の場合だけを抽出してその間隔を自動計算できるようにしていた。

我ながら使いやすくいいアプリだと思ったんだけど、夫婦で同一の記録を共有するのが簡単にはできないのが問題だった。そもそも本格的な陣痛が始まったのは入院後だったのでアプリを活用する出番がなかった(病院では CTG と呼ばれる陣痛を監視できるモニターがある)。まあ、アプリ作りの勉強にはなったんだけどね。。

もう一つ便利ツールを作っていた。それは妊娠月数、週数、日数を自動計算するものだ。よく妊娠何ヶ月?何週目?などと聞かれる。でもパッと答えられないじゃないですか。

そこで、FileMaker で自動計算してそれを毎日 Slack で通知していた。「今日は妊娠 n 日目です。これは x 週 y 日、z ヶ月です。」みたいな感じだ。これは我ながら非常に役立った。

毎日通知するために、FileMaker Server のスケジュール機能を使っていた。でも出産前の何日かは通知が来ていなかった。実はそれは出産予定日で通知をストップするよう、あらかじめ設定していたからだった。予定日を過ぎてからの通知は焦りの原因となる。予定日後に通知を自動でオフにするようにしておけば焦らなくて済む。通知を手動でオフにする必要もない。我ながら「過去の自分」は賢かった。

出産までに夫婦で挑戦していたことは「ジブリ映画マラソン」を完走することだった。つまり、過去のジブリ映画を一緒に全部観るわけだ。何事も何かをやるには一人では簡単だけど、複数人だとタイミングを合わせる必要があるので難しい。それでもジブリマラソンはあと『平成狸合戦ぽんぽこ』と『風の谷のナウシカ』の2本を残して時間切れ。出産を迎えることになった。そこそこ頑張れた。続きは退院後に観よう。

マタニティー・フォトも撮った。一つは普通にお腹の写真を継続的に撮っていくことである。定期的には写真を撮らなかったが数週間ごとに写真を撮ってきたので連続して見ると面白い。カメラを置く位置と妊婦が立つ位置をマスキングテープで印をつけておけば、何ヶ月経っても同じ位置で撮影できる。ただ写真としては、半裸の状態なので夫婦以外の人には見せられないのは残念だ。

もう一つのマタニティー・フォトはオシャレな感じでお腹の大きい状態を写真を撮ることだ。これは写真屋さんでもそういうサービスがある。でも、私はそんなのにお金を掛けるのがもったいないと思ったので、自分で写真を撮り私が Photoshop で加工することにした。Pinterest の写真を参考にそれなりにオシャレな写真ができあがった。

母親教室で「臍(さい)帯血バンク」の営業マンが来て説明があった。臍帯とはへその緒のことで、出産の際処分されるか、日本の場合家に保管する人もいるだろう(実家には私のへその緒がある)。臍帯から摂取される血液(臍帯血)は難治性血液疾患の治療に使える。公共の臍帯血バンクもあるが、民間のものには自分の臍帯血を保管して、今後子どもが病気になった際にそれを利用できる。それが臍帯血バンクである。自分の臍帯血だからマッチングの問題が起きないのだ。

ステムセル研究所
https://www.stemcell.co.jp/

民間臍帯血バンクの「ステムセル研究所」の説明を聞いたり、パンフレットを読むといいことしか書いていない。私にはそれが逆に「怪しい」と思えてしまう。近未来の技術を利用したことで引き起こされる悪夢を描いた『オープン・ユア・アイズ』(のちにトム・クルーズ主演の『ヴァニラ・スカイ』でリメイクされている)という映画を思い出してしまう。また、ある種の「保険」であるから、人の不安を利用したビジネスなのも気にくわない。そもそも結構高額だ。

でも、積極的に「やりたくない」と言う根拠もないので、ワイフの希望を尊重して我が家もやることにした。

申し込みをすると臍帯血採取用のキットが届くので、産婦人科に渡せば採取してもらえる。出産後ステムセル研究所にすぐ連絡すれば回収に来てくれるので、保管施設へ持っていかれる。そういう仕組みだ。

私は出産後の安堵ですっかり電話連絡のことを忘れていたが(通常出産後3時間以内に、臍帯血回収の電話をするよう指示されている)、寝床に入ってからハッと思い出し、すぐ電話をした。

臍帯血に限らないが、出産に際してアタフタすると大事なことを忘れたりするので、あらかじめチェックリストを作っておくのがいい、と教訓を得た。

後で気付いたことだが、臍帯血採取用キット回収依頼の電話で私の電話番号を間違った番号を伝えてしまった。何の音沙汰もないぞと思っていて、看護師さんに確認してみたら、ちゃんと回収にやって来たという。それならまあいいとしよう(おそらくは回収前後に担当者から電話連絡があったはず)。この後請求書が届く予定だ。

私は出産はもっと「段階的にやって来るもの」だと思っていたけど、実際はそう都合よくはいかず、気が付けばズズズッとあっけなく終わってしまった。後回しにせず、早め早めに準備しておこう。