[読書メモ]『麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか』

p5
救いがあるとすれば、感染症の世界にもちゃーんと原理、原則、基本が存在するということです。

p6
意外に知られていないことですが、いま日本は不名誉なことに国際的に「感染症大国」と呼ばれています。

p27
先進国ではほぼ命脈が尽きたと思われるはしか(麻疹)が毎年、流行する国ニッポン。先進国で唯一、HIV/エイズが増加傾向にあり、結核がいまだに減らない国ニッポン。ワクチン行政が 20 年遅れているといわれている国ニッポン。

p42
日本人には強い薬信仰とお医者さん信仰があります。

p43
吟味も検証もなしに、自分の直感や経験を信じ込むのも同じように正しい態度ではありません。

p43
「俺の診療は、絶対正しい」と断言する人は、名医とは呼べません。

p46
薬には副作用はつきものですし、しかも的確な処方であっても、患者との相性などで副作用の発生を予見できない場合があるからです。/なかなかこの “相対的” という大人の考え方が日本人は苦手のようです。

p47
いま、オランダなどの外国の医療では、「シェアード・ディシジョン・メイキング」(shared decision making)とか、「シェアード・リスポンシビリティ」(shared responsibility)という言葉・コンセプトが注目されています。医者が全ての権限と責任を独占し、治療方針を押しつけて、失敗すると断罪される、という患者さんにとっても医者にとっても不幸な人間関係はいびつです。

p49
日本の外来患者受診数は世界でいちばん多いのです。

pp49-50
パチンコ、競馬、競艇、競輪、宝くじなど射幸性の強い娯楽は、かならず親が勝つような構造になっていますから、リスク回避的な発想でいえば、これらの産業はすぐに廃れてしまうはずですが、日本ではとても巨大な産業です。

p56
厚労省の役には、2、3年ごとに担当部署が変わるため、責任の所在をあいまいにします。彼等の辞書には「責任を取る」という言葉はありません。

p62
どうも日本にはワクチンに対する定見がない__これが盲点です__ために、諸外国のような明確な指針が出せずにいるような気がします。

p71
定期接種だと、「国が決めていることだから、理由はよくわからないけれども従おう」となりがちです。せっかくの機会ですから、健康は自分で守るという当事者意識をもつチャンスにしたいものです。おかみ任せにしていると、副作用が起きたときなど、「私には何の責任もない、国が責任を取れ」と、また逆パターナリズムの世界にはまってしまいます。

p90
彼らにないのは、勇気です。過去の習慣や慣習から決別する勇気、日本と世界の差を直視する勇気、責任を取る勇気がないのです。日本の役人にはそれだけが足りないのです。/ほんとうは、勇気こそが高級官僚に必要な資質なのですが。

p129
さらに問題なのが置き薬です。

p157
広い抗生剤ほどよけいな殺菌を殺して耐性菌が増える可能性だってあります。実際、新薬が使われやすい日本やアメリカは耐性菌だらけで、感染対策では劣等生です。

pp157-158
私は新薬が発売されても、よほどのことがないかぎり、数年は使いません。新薬を使わなくても患者さんの治療に影響が出ることはほとんどありません。古い薬であれば、私はその副作用も長所も知り尽くしています。副作用があることが問題ではないのです。その副作用をよく理解していることこそが重要なのです。/しかし、新薬ではその副作用の全貌は誰にもわからない、ブラックボックスです。

p160
ものの値段は、その品物の価値によって決めるべきであって、古いか新しいかだけで画一的に決めるいまの薬価の仕組みはひじょうに不自然です。

p166
こんなによくある当たり前の病気なのに特効薬がない、というのはとても象徴的です。画期的な毛生え薬がない、水虫薬の決定打がない__いずれも身近な悩みなのに解決策がない、という不思議、そういえば、恋の悩みに効く薬もありません。

p172
フォローアップ(経過観察)

p177
私自身、学生のときは性についておおっぴらに語るのが苦手でした。「自分はそういうキャラじゃない」とも思っていました。でも、本当は 20 代やそこらで「自分はこういう人間だ」なんてわかるわけがないのです。

p177
人はしがらみをたくさんもっていますが、案外捨ててしまえば楽なものです。

p192
私はむしろ、医者は朝令暮改でいいと思っています。朝に言ったことでまちがいがあれば夕べには訂正する、それが柔らかい賢者の知恵というわけです。

p201
日本の記者は論文を読まずに、記事を書きます。これが普通の状態になっているため、論文を読む力がつかず、記事内容もいい加減になってしまうのだろうと思います。

p207
健康情報番組や雑誌を正当に評価する簡単な方法があります。[…]それは、データを全部開示してもらうことです。

p217
「リスクは回避するものではなく、管理するもの」

p218
言葉づかいがどうであるべきか、患者に様をつけるべきか__こうした技術的な問題はどうでもよいのです。

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