[読書メモ][Kindle]『お葬式は、要らない』
- 読書
- 2017/09/28 Thu 06:49
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最近の社会の変化は速い。昔ならそう簡単には変わらなかった慣習や習俗が急速にその姿を変えている。
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仏教界は「じきそう」と読み、葬祭業者は「ちょくそう」と読む。仏教の世界では、漢字を「呉音」で読むのが一般的で、直の呉音は「じき」である。たとえば、一直線に悟りの世界に行き着くことは「直道」で、これは「じきどう」と読まれる。
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結婚式の変化と最近の葬式の変化は、深いところで連動している。後に詳しく論じるが、背景に「家」の重要性が失われてきたという事態がかかわっている。
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今日の仏教は「葬式仏教」と言われるように、死者を葬ることを第一の使命にする
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浄土真宗の教えは北陸を中心に民衆の間に広がっていく。現在でも北陸地方は「真宗王国」と呼ばれる。
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全国に1万4000軒の寺を抱える曹洞宗の場合、住職の平均収入は565万円という調査結果が出ている。これはあくまで平均の数字で、多くの寺院では300万円以下である。
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檀家がいなかったり、その軒数が少なかったりすれば、寺院経営は成り立たず、住職も生活できない。そのため、住職のいない「無住」の寺が増えている。全国には7万以上の寺があるが、そのうち約2万の寺が無住化していると言われる(村井幸三『お坊さんが困る仏教の話』新潮新書)。
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最近、寺の本尊となっている仏像の盗難事件が頻発しているが、それも、無住の寺が増え、日頃、管理の目が行き届かなくなっているからである。
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都市部に生活する人間の感覚では、今では土葬は許されていないかのように思われているが、東京、大阪、名古屋などの大都市で条例により土葬が禁じられているものの、他の地域では決して禁じられているわけではない。
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墓参りの慣習は日本以外の東アジアでも共通することで、中国や台湾、韓国では熱心に墓参りをする。
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これがヨーロッパになると、墓参りの慣習はほとんどない。墓をもうけるものの、それは故人を葬る空間にすぎず、残された家族が命日などにその墓に参ることはない。そもそも個人墓が主流で、日本のような家の墓はない。
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私の実家で墓参りをしたときにトルコ人の彼も同行したが、彼はそれを「お墓祭り」と呼んだ。お墓参りを聞き間違えたものだが、一族が集まって花や線香などを供える光景は、彼にとって祭りに見えたことだろう。
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私は、日本人が墓参りに熱心なことをさして「お墓参り教」と呼ぶが、それは祖先崇拝の現代版にほかならない。日本人は自らを「無宗教」と称し、特定の信仰をもたないことを強調するが、墓参りを通して先祖を大事にする感覚はまだまだ強い。
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今、どこの墓地でも、この無縁化の増加という事態に直面している。
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家を単位とした葬式や葬り方が、今や実情に合っていないのだとも言える。
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戦後、人が亡くなる場所は自宅が一番多かった。1960(昭和35)年の時点で、すべての死亡者のなかで自宅で亡くなる人の割合は70パーセントを超えていた。/だがその20年後の1980年、病院で亡くなる人の割合が50パーセントを超えた。近年では80パーセントを超えるまでになっている。
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自分でつけるのは難しいというのであれば、誰か他人につけてもらえばいい。昔の有名な作家は、けっこう他人の戒名をつけている。/文豪・森鷗外は、母親の戒名をつけたし、友人の文学者・上田敏の戒名もつけた。
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戒名が死後の勲章の性格をもち、故人が送った生涯や業績、性格を集約するものであるならば、本当は、故人のことをよく知らなければ、戒名はつけられないはずである。
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故人を知らないままつけるのは、戒名の性格に矛盾している。
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そのため、僧侶向けに戒名のつけ方のマニュアルが刊行されている。そうした本では、どういった字を選べばいいのかが解説されている。あるいは、戒名をつけるためのコンピュータ・ソフトも開発され、販売されている。
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最期まで生き切り、本人にも遺族にも悔いを残さない。私たちが目指すのはそういう生き方であり、死に方である。それが実現されるなら、もう葬式がどのような形のものでも関係がない。