[読書会]『サピエンス全史』
- 読書
- 2017/04/29 Sat 08:26
4月の読書会の課題本はユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』(上)(下)だ。
関連本としてとりあえず原書の “Sapiens: A Brief History of Humankind” を読んだ。著者は他に本がないっぽいので、これを機に世界史関係の本を読んだ。
・宮崎 正勝『世界全史 「35の鍵」で身につく一生モノの歴史力』
・上杉 忍, 山根 徹也『歴史から今を知る』
・安田 喜憲『一万年前』
・本村 凌二『教養としての「世界史」の読み方』
他にも佐藤優さんの世界史系の本も読んでいる最中だ。私は受験で世界史を勉強したが、全然頭に入っていないので、もっとがっちり勉強したい。
さて、今回の課題本だがなんだかタイトルからして難しそうだなと思っていた。でも実際に読み始めるとすらすら読める! でも・・・読み終わってもよく分からない・・・。そんな感じなので3回読んだけど、結局よく分からなかった。
この本はまるで池上彰である。彼はみんな「分かりやすい」と言うわりに、私にはすごく分かりにくい。『サピエンス全史』も読むことに抵抗感を感じないわりに頭に入ってこない。どんなに分かりやすくても、ちゃんと相手に伝わらなければ意味がない。
分かりにくいもう一つの理由が、著者自身が歴史をカオスだと捉えているからだと思う(下巻 p47)。歴史を構造のあるものとして伝える気がないんだよ。その点佐藤優さんは「歴史は過去の繰り返しなのだから、アナロジー(類推)として考えると現在や未来を解釈できる」としている。私は佐藤さんの考えのほうが好きだ。
あまり本書を理解できていなかった者としてのモワッとした感想は、著者にはあまり同意できなかったということ。切り口は面白いものがちょくちょくあったが、ポジティブな思想を感じられない。シニカルなのだ。「人類の歴史は矛盾だらけだ」と言っているように読めるし、下巻のグロテスクな家畜の話はいやーな気持ちにさせられた。あとがき(下巻 p264)では「人類の歴史は誇れるものは何も生んでいない」とまで言っている!
下巻 p106 にあるように、まだ人類が地球の全体像を理解できていなかった時代は、世界地図で空白部分を残しているという話は面白かった。「まだまだ伸びしろがある!」というポジティブな考えは好き。
上巻 p38 の噂話の話にはガッカリした。著者は「人類は所詮、噂話ばかりしてきた」なんて書いているから。私はサラリーマン時代に、同僚が昼食時や飲み会で噂話ばかりしていることにうんざりしていた。「○○さんが〜」とその場にいない人の解釈を広げ、それを伝言ゲームのようにあれこれ話すのは馬鹿らしい。同様に私は内輪話も好きではない。読書会の運営に参加して私が気を付けたいと思っていることは、内輪の組織にしないことである。中にいる人だけでキャッキャと楽しむのではなく、初心者でも気持ちよく入れるようにオープンにしたい。
下巻 pp231-232 で幸福感を得られる薬が配布される社会について仮定の話がされている。自分ならそういう薬を飲むかどうか、何が問題なのか、この部分は読書会のテーブルでも盛り上がった。私は飲みません。人工的な化学物質は極力摂取したくないナチュラル系男子(笑)なのも理由の一つだけど(食事には気を付けているし、薬もなるべく飲まないようにしている)、人は幸福を感じたら成長しないからである。幸福を感じて現状に満足すると、「より良くしたい」と変えていく気持ちがなくなってしまう。組織だって、変化を避け、現状維持を続ければ潰れるのは必至である。私は現状の幸福感は低いし、不満も多いが、それを悪いことだとは思っていない。理想と現状にギャップがあればあるほど、日々のエネルギーが生まれるからである。
政府が幸福の薬を配る社会の逆として、映画『トゥモロー・ワールド』を紹介しておいた。映画では自殺薬が政府から配られるディストピアが描かれている。でも、本に書かれている幸福の薬を配らなくてはいけない社会も、自殺薬を配らなければいけない社会も、人々が自分で幸福をつかめず絶望している点で同じなのかもしれない。
本書は宗教についても触れられているが、宗教と幸福について考えると私には身近なテーマだ。なぜなら私のワイフはクリスチャンだから。ワイフと一緒に生活していたり、教会に行ったりすると、やはりクリスチャンは普通の人からすると独特の世界観を持っていると思わざるを得ない。彼らはいつも周りに感謝している。幸福度が高い。だから、前述した私のような「もっと良くしたい」と考える人間とは別世界の人たちなんだ。それに伴う結婚生活の不満についてはここには書くのをよしていこう(汗)