語学関係の本を探していて適当に選んだ本だ。

Amazon.co.jp: 語学の天才まで1億光年(集英社インターナショナル) eBook : 高野秀行: Kindleストア
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久しぶりにエキサイティングな本を見つけた。僕は Kindle を寝る前の5分程度読むようにしているが、本書の場合続きが気になって 15 分ぐらい読んでしまう。分厚い本のようだが(Kindle だとあまり実感がない)、結構早く読み終えた。

探検家と称する著者が、世界中の辺地で少数言語などを学んでいく話だ。

教科書すら存在しない言語を手探りで学んでいくところが面白い。そして結局ネイティブが話すことを録音し、それを繰り返し聞いて真似することが語学の基本だと分かる。

特に新鮮だったのが、「語学におけるノリ」についての話だ。言語ごとにそれぞれノリのようなものがある。日本語には日本語の、英語には英語のノリがある。だから日本語のノリで英語を話すとすごく弱々しくなる。僕も最近イギリス人から英会話を習っていて、僕自身日本語のノリで英語を喋っていることに気付いた。だから英語っぽく聞こえないのだ。言語のノリなんてことは考えたことがなかったから新鮮だった。次からは英語を話すときはイギリス人になった気分で話すよう心掛けよう。

正直言うとあまり文章がうまいとは思えないが、何しろ内容がすごく面白いので気にならない。十分楽しめる。久しぶりにウォッチしていきたい面白い作家を見つけた。著者の他の本もどんどん読んでいくつもりだ。

以下読書メモだ。

Location: 25
現実の自分は外国人を目の前にすると、必ずあたふたする。

Location: 34
私は語学に対して並み外れた深い想いを抱いている。言いたいことも山ほどある!!

Location: 36
語学のことになると私はすぐテンションが上がってしまうのだ。

Location: 47
言語(語学)はひじょうに強力な道具なので、ときには「魔法の剣」のように思える。てきとうに振り回しているだけで自然に「開かずの扉(に見えるもの)」が開いてしまったりするからだ。

Location: 55
言語を学ぶと、それを話している人たちの世界観もこちらの体にも染み込んでくる。それが面白くてしかたない。

Location: 63
もっと一つ一つの言語を地道に学習すればいいと自分でも思う。でも私はまるで薬物依存症患者のように、次から次へと新しい言語をつかまえては習って現地の人と話してみたくなる。新しい言語宇宙を探検したくなる。語学の魔力はかくも恐ろしい。

Location: 153
いまだに「聞き流すだけで英語がペラペラになる」という 謳い文句の語学教材があるが、そんなことは絶対にありえない。もし誰かが英語(か他の言語)を聞き流しているだけで聞き取りや会話ができるようになったとしたら、それは聞き流しているのではなく、集中して耳を傾けているはずだ。

Location: 158
親が先生役になっても子供は素直に言うことを聞かない。

Location: 194
相撲は横綱がいちばん偉いと思っていたが、実は相撲協会がいちばん偉いのである。そして自分は相撲協会の立場に立っている。面白くないはずがない。

Location: 372
私は旅の半年ほど前、車の免許を取りに教習所へ通っていたのだが、ある教官が授業でこう言っていたのを思い出した。「みなさん、免許を取っていざ道路に出たら、他の車にぶつけちゃうんじゃないかと心配になるでしょ? でも大丈夫です。他の車(運転手)はみんな、みなさんより上手です。ちゃんとよけてくれます」。当時、これほど教習中の私を安心させてくれた言葉はなかった。/同じようなことが語学にも言えるのである。「言葉が通じないと心配するかもしれないけれど、他の人たちはみんなもっと上手です。ちゃんと助けてくれます」

Location: 508
話したいことがあれば、英語は話せるのだ。

Location: 598
内気な私にしてはものすごく珍しいことだ。

Location: 714
私はときどき、主目的を外れて、目の前に現れた「探検的」なものに飛びつく傾向がある。

Location: 968
そんな私でも地元の言語を習って片言を喋るくらいはできる。そしてそれがめっぽうウケる!/旅先のローカル言語を話す醍醐味に完全に目覚めてしまったのだ。

Location: 1,550
それ以降私は目的達成の手段や現地の人と仲良くなるためのツールとして必要なときだけでなく、無力感に 苛まれたり、精神的に落ち込んだりすると、反射的に言語学習を始めてしまうようになる。学ぶ意味があるのかとか話せるようになるのかなんてことも度外視して、それにすがってしまうのである。

Location: 2,542
作家だということは聞いていたが、私を含め「自称作家(ライター)」は世界中どこにでもいて、そのほとんどが大した実績のない人

Location: 2,710
時間が固定で動かせないのも重要だ。先ほど書いたように語学はスポーツトレーニングとほぼ同じなので、できるかぎり練習のリズムを作ることが大切だ。同じ日の同じ時間にレッスンを受け、復習も同じ時間帯に行う方が技術・知識の定着率は高くなる。

Location: 2,806
タイは日本同様、植民地にされた経験がないアジアでは数少ない国の一つ

Location: 2,834
食堂やデパートなどで同世代の若い女子の店員とタイ語で会話するのも楽しかった。

Location: 2,987
言語(外国語)は「話したいことがあると話せる」のである。

Location: 3,291
このように常に「暫定的に法則を見つけ、新しいことがわかれば、随時その法則に変更を加える」というのが、私が独力で編み出した調査法だ。とはいっても、フィールド言語学の世界ではごく初歩的な手法であると思う。

Location: 3,307
完全に気分は〝探検〟だった。

Location: 3,338
二十代の後半、私は長い迷走期に入った。だが迷走している本人はなかなかそれに気づかないものらしく、当時の私も「俺は自由に生きている」と信じ込んでいた。

Location: 3,341
「誰も行けないところへ行って誰にも書けない本を書かねば」

Location: 3,396
話す態度としては、目を合わせず、ちょっと恥ずかしげな、おどおどしたような態度をとることが多い。これは日本人が「相手より自分を小さく弱く見せることが礼儀正しい」と思っているからである。

Location: 3,419
情緒不安定になったら新しい語学をというのも、私のお決まりのパターンだ。

Location: 3,464
「会話のトピックは語学とは別問題なのではないか」という反論があるかもしれない。でも、こういった「何を話すか」というのも「言語のノリ」に含まれると私は考える。

Location: 3,570
ときとして学ぶ者にとってひじょうに重要な要素が〝飢え〟である。

Location: 3,572
明治時代に文学者たちが当たり前のように英語、フランス語、ドイツ語などを読めたのは、読みたい本の日本語訳がなかったからである。〝飢え〟は極度の主体性を生む。

Location: 3,612
日本語は一つひとつの音が弱いが、それを補うかのように、前後のつながりを大事にする。だから「そんなことはないとは思うんですが、もしかしたら必要かもと思って一応買っておいたんですが……」と長々と喋る。音も多ければ単語の数も多い。中国語は同じ意味のことを言うにしてももっと簡潔な表現を好む。まるで日本人と中国人の気質のちがいが言語に表れているかのようだ。

Location: 3,616
私が習ったことのあるすべての言語の中で日本語はいちばん、接続詞の使用が多く、たくさんの言葉を費やす。英語やタイ語、ビルマ語、ソマリ語、アラビア語よりも冗長だ。まさに「ノリ」のちがいなのである。

Location: 3,693
わからないものをわかるようにしたいというのは、私のもって生まれた特性のようなものである。

Location: 3,720
それより大事なのは「自分で法則を見出す」ことなのだ。それは私の中では「探検」の範疇に入る。

Location: 3,721
私はITや機械類のマニュアルや地図を読むのが苦手なのだが、それは他人が作ったものだからだ。

Location: 3,799
中国は、ある意味で南米に似た魔術的リアリズムを感じさせる国だった。

Location: 3,890
(言うまでもないが、ネイティヴへの電話取材は対面での取材より難度が高い)。

Location: 4,054
クリスチャン(特にプロテスタント)は世界の言語研究と言語の文字化に巨大な影響を及ぼしている。

Location: 4,124
言語は遺伝子レベルで受け継がれるのではなく、人間の文化レベルで後継されるから、系統がちがう言語であっても、近くにあれば影響を与え合うことがある[。]

Location: 4,152
この「ネイティヴの例文読誦を自分で反復練習する」というやり方が(少なくとも自分にとっては)ベストの学習法だと思っている。

Location: 4,321
語学は物真似である。意味が多少わからなくても、ネイティヴが言うとおりに話せば、けっこう通じるし、それが正しい表現となる。同じ言葉をくり返すことが心にも共感を生む。周波数が合うというか気持ちがシンクロするというか。それがネイティヴ相手の会話では極めて大事なことだと二十代の約十年をかけて世界中で学んできた。

Location: 4,389
結局のところ、純粋に科学的(言語学的)に考えれば「方言」など存在しない。どの地域でも、それぞれの歴史的経緯において生じた言語が存在するだけである。方言はどこかで標準語が作られたとき副次的に生じる、政治的・社会的な産物である。

Location: 4,720
やはり語学の必要性が完全になくなることはないのではないかと私は思っている。IT時代の語学の意味を考えるには、まさにこの本に書いたことが肝になる。私はくり返し述べている。言語には「情報を伝えるための言語」と「親しくなるための言語」の二つがあると。

Location: 4,730
翻訳や通訳は、ガラス越しでの会話みたいなものだ。興味を抱いた他人と、ガラス越しではなくじかに触れたいと思うことは、人間の本能に根ざしているのかもしれない。互いの心臓の鼓動を聞くような語学は生き続けると、私が確信するゆえんだ。

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