[読書メモ]『いちばん大事な子育ての順番』(虹乃美稀子)
p18
私は、子育てが目指すところは「大人になったときに、本当の意味で自由な人間になる」 ということなのでは……と思います。
p36
赤ちゃんのいる場所では、テレビを消すこと。/これは、子どもの前ではタバコを吸わない、というのと同じくらい当たり前のマナーになってほしいと思います。
p38
赤ちゃんと一緒にお出かけするときは、なるたけ騒々しくない、落ち着いたところが好ましいです。
p48
濡れおしぼりは常に手元に置きましょう。汚れた手や顔を食事中に拭いてあげることで「気持ちよさ」の感覚が身につき、次第に自分で拭くようになります。こうした習慣がのちに、食事時の落ち着いた姿勢を育む基盤となります。
p49
きちんとした言葉で話しかけるということは、子どもでも大人でも相手を尊重しているということです。
p55
画面に釘付けの子どもは、微動だにしませんよね。視線も固定され、呼吸も浅くなっています。
p57
その子自身が体験から培(つちか)う内的な記憶を大切にしてあげましょう。幸せな記憶はささやかなものでも、その子を一生支える無意識の力になってくれるはずです。
p59
しかし、実のところ子どもは、本当に雨が降ることの科学的根拠を知りたいわけではないのです。そうではなくて、知りたいのは「目的」です。2歳の子が自身の暮らしの中で把握できるつながりの中での、です。そうすれば自ずとより良い答え方が見つかるでしょう。/「畑の野菜も木も花も元気に育つようにだよ」/そんな風に答えてあげると、子どもは安心して納得します。早々と科学的な説明をすることは、子どもたちの世界と親しみをもってつながりたい欲求を失わせてしまいます。
p61
新聞紙や汚れてもよいシートを敷いてあげると、子どもは喜びます(エリアを作ってもらうことは、子どもにとって常に喜びです)。
p64
でも、ふと気づくと私たち自身もお腹がグーッと鳴るほどに空腹になる機会が少なくなっているのではないでしょうか。現代はいつでもどこでも手軽に食べ物が手に入る状況なので、一昔前よりも空腹に耐える時間を持つ機会が減っています。大人でも「ちょい食べ」が癖になっていて、一日三食のリズムを保つのが難しくなっていたり、それでダイエットが必要になったりしています。
p65
ごはんをおいしく食べる何よりの条件は、適度な空腹です。どんなにおいしいごちそうも、お腹に何かが入っていると、そのおいしさは半減してしまうことを、私たちはよく知っています。/空腹感はとても大事な感覚で、自分の中の体調を感じ取る感覚の根っこにあります。ここが麻痺していると、成長したときに「ちょっと疲れているな」「寝起きがスッキリしない」「なんか身体が重く感じる」といったような、自分の体調の異変を感じ取る力が失われていくのです。
p70
子どもが小さいうちから世の中には「越えてはいけない一線」があるということをしっかりと伝えていかなけ けないからです。
p78
「選ぶ」って実は小さな子どもには難しいんです。○○がいい、○○が好き、と思う主体となる「自意識」がまだ目覚めていないからです。
p80
特に気をつけなければいけないのは、選ばせた後で選んだものを気に入らなくなったりしたとき。「自分で選んだんでしょ」と、突き放すようなセリフを大人は言いがちです。/子育てにおいて責任は常に、大人の側にあることを忘れてはいけません。
p85
親子クラスに来るお母さん方はよく、まだ就園前の小さな子どもに「ほら、あいさつは?」「練習してきたじゃない、できるよね」と促しがちです。/「あいさつはちゃんとできるように育てたい」と思ってらっしゃる方が多く、それは素晴らしいことなのですが、だとすれば、はじめからあいさつを形骸化してしまうような働きかけはおすすめできません。
p90
また、トイレですることに成功したときに、ぎょうぎょうしく褒めたりするのも逆効果です。何か特別難しいことに挑戦しているような印象を与えます。排泄は自然な行為ですから、その結果を評価して強く印象づけたりしないほうが良いのです。成功しても、失敗しても、とりわけ褒めもけなしもしないのが早道です。
p100
多くの新しい「体験」よりも、「いつもの経験」の積み重ねに価値があります。
p101
「何回言ってもわからないんです」と悩まれるお母さんは多いですが、子どもには「繰り返し」と「根気よく」が大原則だと思ってください。一回でわかってもらおうとするのは無理です。
p111
けなすのはよくないけれど、褒めるのは存分にしていい、というのは陥りやすい間違いです。子どもとの関係が浅く、表面的な対応をしがちな大人に限って「すごい!」「さすが!」を連発しているのを見ると、ちょっとさみしい気持ちになるものです。それは子どもにも伝わるでしょう。口先だけの褒め言葉は、人間存在への信頼を失わせます。
p124
幼児は「今ここ」を生きているので、「何もしないで待つ」ことはできないのです。
p125
子どもがおとなしくなるからと、スマートフォンやゲーム機を預けたりするのは、子どもに麻薬を与えてぼんやりさせ、黙らせるようなもの。
p134
子どもはこうした心地よいリズムのある暮らしを安定して繰り返す中で、自然とその子どもなりの呼吸=体内時計を整えていきます。
p136
夢中になって遊んでいる子どもたちを、叩き起こさずに自然とお片づけへと誘う良い方法があります。それはお片づけの時間であることを知らせるような歌を小さな声で歌ったり、子どもの遊ぶ周辺からそっと大人が片づけを始めたりすることです。
p149
「○歳のうちに○○を始めないと手遅れ」/「脳は早いうちに働きかけないと、そのあとは成長しない」/「耳が育つのは○歳まで」/こういった言葉はすべて、子どもをターゲットとしたビジネスで使われる常套句です。そこには必ずと言っていいほど、有名大学の先生やお医者さんといったその道の専門家の言葉や数値が「証言」として紹介されます。
p151
この「内なる表現欲求」、そして「やりたいことを実現する意志の力」こそが、幼児期に育てるべきもの。表現したい内なる熱がなく、魂から湧き起こる「やりたい!」という情熱もなく、やらされてやっていることは、たとえその場の技能をいくらか先取りで身につけたとしても、長い目で見たときにその子を支える力にはならないということ、おわかりいただけるでしょうか。
pp179-180
「型」を作るとは、「動きの流れと物の置き場所を考える」ということです。子どもの毎日の持ち物、上着や帽子やランドセル。教科書に筆箱、体操着。宿題のプリントやハンカチ、ティッシュ。すべての諸々の置き場所をしっかり決めてあげ、毎日の身支度と整頓の動きの流れが無駄のないように(無駄がないということは、動きやすいということです)、まずは大人がよく考えて提案してあげるのです。すると、子どもはその「型」をなぞるだけでよくなります。型をなぞることを促してあげればよいのです。/整理整頓のやり方を、子どもが考え出すのはまだ難しいのです。大人の思考でよく考えられた「型」をなぞるように繰り返すことで、子どもは整理した動きが習慣化して、からだに染み付きます。/「型」をなぞるには何事も反復練習が必要ですから、繰り返し促すことはこの年代の子どもには当たり前で大切なことなのです。/「小言を言っている」と思わないで、「身につくように反復させてあげている」と思ってください。
p182
もしもあなたが納得がいかない、腹が立つようなことがあったら、陰で言うのではなく、本人の前で堂々と伝えたほうがよいのです。喧嘩になったとしても、陰口を言うよりはずっと健康的です。喧嘩は仲直りの余地がありますが、陰口は言う人にも聞く人の心の中にもジメジメとしたカビを生えさせ、いじめを生み出す土壌を作ります。
p183
子どもに対しても友達のように振る舞う大人が増えました。
p192
宮沢賢治、ヘレン・ケラー(と彼女を導いたサリバン先生!)、ガンジー、キング牧師……そういった大いなる困難の中で希望を見出した先人たちの物語は、未来を生きる子どもたちの大きな助けとなります。
p196
現代は明治時代よりもずっと「個」が尊重され、それぞれがやりたいことを好きなだけやる自由が保障されています。/しかし一方で、外からの規制ではなく、内なる自制心を持って行動を制するあり方はみんな苦手になってきています。/本当に「自由」な人間は、外からの規制に頼らずに、内なる力で自分をコントロールできる人間です。それには強い意志の力が必要です。その力を育むためにも、子ども時代には大人が壁を作ってあげることが、時に必要なのです。
p218
ひとことで言うと、どんなときでも、生きていることそのものがとても楽しいと感じられるようになったのです。楽しくなってきたら、大変なことさえ何かのより良い機会に思えるようになり、気づいたら「虹のこども園」が生まれていました。自分で幼稚園を作ることになるなんて、夢にも思いませんでした。人生って、ほんとうに不思議です。
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