[読書メモ]『子どもの教養の育て方』(佐藤優、井戸まさえ)

p9
どうすればみなさんが教養を身につけることができるかについては、「この問題集を一冊完全にマスターすればいい」というような形で示すことができません。ゲームの攻略のようなやり方は、そもそも教養という考え方に合わないのです。

p10
どの親も、自分の子どもがいじめの対象になるのではないかという不安を持っています(逆に、自分の子どもがいじめの加害者になる可能性について考えている親はあまりいません)。

p12
ゲームやテレビで「依存症」という癖がついてしまうと、大人になってからとても苦労することになります。/成績がよくて、一流企業や役所につとめている人で、依存症で苦しんで最後には仕事も家庭も失ってしまった例を、私は実際に見ています。それだから、ゲームやテレビについては厳しいことをいうのです。

p29
そこで課題を与えると、それに対して答えを見つけるという楽しみが出てくる。

pp52-53
そもそも本当に優れている人は、自分の考えはあっても、それを子どもには押し付けないですからね。

p54
もし子どもが悪いことをした場合、あるいは危険なことに巻き込まれた場合、常に親に相談できる態勢をつくっておくこと。「親はどんなことがあっても子どもを許す」「子どもの味方である」という信頼関係をきちんとつくっておくことですね。

p60
重要なのはプロの手が加わった文章を読むこと

p61
図鑑でも読む訓練になります。ここで重要なのは、「編集者」なんです。要するに、プロの手が加わった、編集者の手が加わった文章を読む訓練をすることが大事なのです。/編集者というのはジャッジメントの機能を持つ。基本的に編集者は保守的です。だから、編集者の手が加わったものに私的な言語は成立しない。言語というのは公共圏のものだという暗黙のルールがありますから。だから、インターネットのブログをいくら読んでも、日本語力は向上しないのです。

p68
「青空文庫」という、著作権、版権が切れた文学作品を無料で公開している電子図書館があるんです。一見いいように思えるんですが、青空文庫には「注」や「解説」がないんですね。だから、青空文庫の作品をそのままで理解できるには専門家レベルの知識が必要です。

pp68-69
中学生の段階で、とくに英語では電子辞書は有害だと思います。いつでも電子辞書で簡単に引けるということになると、覚えないんです。ワープロを使っていると漢字を覚えなくなってしまうのと一緒です。

p78
「天声人語」はよくない。どうしてかというと、「天声人語」は起承転結になっているからです。起承転結は論理が破綻してしまう。起承転結は、文学的、情緒的な世界を描くための技法であって、じつは論理的な文章の書き方の技法ではないのです。

p82
「型」があってはじめて破れるわけですが、最初から型破りなところから入ってきちゃうと、たんなるめちゃくちゃになってしまいます。

p83
ラジオとテレビというのは、シナリオを見ているとよくわかるんだけれども、使っている語彙数が全然違うんですね。ラジオのほうが新聞に近いんです。

p85
普段から話す力のある子どもとコミュニケーションしていると、子どもが急に話さなくなったとき、何か隠していることがわかるようになりますよね。子どもがいじめにあっているなどというときに、かなり早い段階で察知することができる。

p87
ついていけなくなってしまったら、塾に通う意味がなくなりますから。/僕が塾教師をやるんだったら、むしろ拘束時間を増やしてでも、宿題は出さないですね。その場で生徒に課題を全部消化させる。

p88
重要なのは、細分化して、「子どもがどこができていないか」をチェックすることです。それをやったら、あっという間に成績が上がる。

p89
大事なことは、ただ机に座っているだけで「勉強をしている」と勘違いしてはいけないことです。とくに数学とか英語に関しては、欠損箇所があるとその上に積めない。だから、高校生でも中学生でも、小学校の段階に欠損があったら、そこに戻らせないといけないんです。

p93
しかし、よほど強い動機がないと、こういう教材を最後まで消化することはできません。

p96
子どもが何かやりたいというときは、必ず親の顔を見て、親が喜ぶようなことをいうんですね。子どもは子どもなりにいろいろと気を遣っているんです。/だから、本当にやりたがっているのかどうかをよく見極めたほうがいい。そして、押し付けにならずに、子どもがつらそうにしていたら、やめさせる柔軟性を持つことです。

p100
受験勉強の過程で身につけた知識というのは、一生役に立つということです。

p102
国語がきちんとできるようになれば、すべての科目の成績が上がります。論理力で、社会科も数学も理科も全部上がります。数学というのは、長々と説明しなければならないことを、数式を使って論理で短く説明しているだけですから。

p127
それから案外、これからのおすすめは文学部です。文学部は、国際基準では「哲学部」なんです。知のあり方とか教養的なことを身につけるには、文学部がいい。

p145
5匹飼っているのですが、血統書つきは1匹もいません。2匹は元捨て猫、2匹は元野良猫、残りの1匹は地域猫、つまり特定の飼い主はいないが地域の人たちが餌をやって飼っている猫を譲られた形です。

p147
それは簡単な合理性です。失敗したときに親が頭ごなしに怒鳴るとか殴ったりしていると、ウソをついて逃げようとする。そこで、ウソをついてそれが露見したら殴られるけれども、露見しなければ殴られないということになったり、とりあえずウソをつくほうが得だから。

p155
佐藤 小さいうちは、ドイツやイギリスに学んで子ども部屋をつくらないのがいいと思います。
井戸 イギリスもないんですか?
佐藤 子ども用の寝室はありますが、うんと狭くて居住環境が悪い。そして少し大きくなっても、部屋にはテレビは置かせないし、コンピュータも基本的には部屋には置かせないというのが、中産階級以上のヨーロッパ人の教育の仕方ですね。子どもたちが自分の部屋に閉じこもらないで、居間に出てくるようにするためです。

p158
子どもにとってはお母さんは絶対の人だから、お母さんが殴られるとか怒鳴られるということは、自分が怒鳴られたり殴られているのとまったく一緒なんです。

p160
暴力の問題に関しては、僕はものすごく原理主義的というか、それなら別れたほうがいいという意見です。

p162
ゲームというのは、本当に子どもの成長を蝕(むしば)むと思う。というのも、ゲームにはデジタル思考の危険性があるからです。

p162
世の中はどんどんデジタルばかりの環境になってきているから、デジタルでない状況を意図的につくらないといけないと思うんですね。

p64
ゲームは将来の依存症の入り口になる

p64
子どもが依存症にならないようにするためには、かなり意図的に親が関与しないといけないと思います。ゲーム、テレビ、ネット。この3つについては、本当に気をつけないといけない。

p166
大事なのはゲームより面白いことを見つけさせること

p167
子育てにおいては、「ある種のことについてはまわりに左右されない」という信念も必要だと思います。その最初の試練がゲームです。親にとっても、子どもにとっても。

p171
お小遣いに関しては、いくら与えるかはともかくとして、小遣い帳をつけることを絶対的な条件にするべきだと思う。そして、親は最低限、小遣い帳のチェックはすること。最初の段階できっちり金銭管理を覚えさせるということです。

p176
とくに領土問題などでは、最近は勇ましい言説が出てきています。そうした中で、排外主義的な思想や、日本は戦後へなちょこになっているから軍事力で物事を解決すればいいという話などは、ある意味、非常に単純明快でわかりやすいんです。でも、それはけんかで物事を解決するという、ものすごく野蛮な発想なんだということを、きちんと教えなければいけません。

p181
教養のある人は闘志を隠します。教養とは隠す力でもありますから。

p195
近代的な自由の特徴とは何かというと、「愚行権」の尊重なんです。つまり、愚かなことをする権利を認めること。ほかの人から見て愚かなことであっても、やって構わないということです。愚かであろうが、新しいことにチャレンジすることによって利益を得ていくというのが近代的な市民社会の原理なんです。/そこで禁止されていることはたったひとつ、「他者危害」です。自分がやりたいことなら何でもやっていいということではない。「俺はこいつが気に食わないからブン殴る」というのはダメなんです。「他者危害」になるから。

p199
ところが、それが構造化されてしまっている。構造化されていると、とくに差別をしている側は、自分が差別者であることについて自覚しないのが通常です。

p202
本の読み方として、アナロジカルな読み方、類比的な読み方というのがすごく重要になってくるからです。

pp207-208
「関係を切る=縁切り」ということでは、日本人は昔からじつに苦労しているんです。

p215
これはまさに、人間の認識をめぐる根源的な問題です。/同じ経験をしても、人ごとに記憶される部分が異なり、非対称的な認識が生まれるということです。/相手は記憶していない。しかしこっちは記憶している。逆にこっちは記憶しているのに、相手は記憶していない。世の中のほとんどのトラブルにはそれが起きているといえます。

p230
もうひとつは「アガペー」という愛で、これは神の愛。一方的な、何の対価も要求しないで行われる愛。「無償の愛」といわれるけれども、逆に日本語で「無償の愛」という言葉があるということは、「愛は基本的に有償だ」という考えが根っこにあるからです。

p231
理屈で完全に説明できるような小説というのは、いい小説ではないんです。必ず残余が出る。それがどれくらいあるかです。

p242
教育の最終的なところは、社会人の教育でも、子どもの教育でも、結局は「信頼醸成」に尽きると思うんです。どうやって信頼される人間になるか、あるいは人を信頼できる人間になるかというのは、どうやってだまされない人間になるかということと「裏と表」なわけです。

p262
読み聞かせのポイントは、同じ本を繰り返し読むことです。親のほうは退屈ですが、子どもは繰り返しをあまり嫌がらない。繰り返すことで、子どもの記憶に定着します。

pp260-261
ゲームではなく極力アナログでやるのがいいですね。どろんこ遊びや絵を描くといったアナログの遊びは、非常に情緒を育てるものです。

p264
親が子どもに勉強を教えると、まずけんかになります。親が自分の子に勉強を教えるのは、無理と考えたほうがいいと思います。/親は自分の子どもに対しては特別な愛情があり、それは教育や知識の伝授という目的とはなじまない。だから学校があるわけです。

p265
ヨーロッパのエリートは、テレビは見ていませんね。テレビは手軽に情報を得られるのですが、裏を返せば、一面だけをとらえて全体像に見せる性質があることを知っているからです。

p266
お金は必要だけれど、お金だけを基準に動く人間にはなってはいけないということですね。勉強についても同じで、勉強は重要だけれども成績だけで動く子どもにはしない、すべての基準を数値化してはいけないということです。

p276
もし、いじめなどが原因でどうしても学校に行きたくない場合には、命のほうが大切ですから、無理に行かせなくてもいい。

p278
現実的な問題として、そんな人たちに挑んで世直しを考えても意味がないからです。変なやつからは逃げる、関わらないという選択も重要です。

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