p9
日本の「お母さん」には基本的人権が認められていないようなのだ。

p17
実際、猫の飼育頭数は増加傾向にあり、ペットフード協会の調べによると全国で飼われている猫の数は1000万匹に迫る勢いだという。少子高齢化なんてどこ吹く風だ。/犬も合わせれば全国で約2000万匹。5歳未満の子どもの数は1617万人だから、子どもの数よりも猫と犬の数が多いことになる。

p19
「保育園」でも「教育」に相当することは行われている。そもそも国の指針でも保育園は「養護」と「教育」を一体的に提供する施設だと定められている。

p20
児童虐待死の8割は、子どもが3歳の時までに起こっている。

p20
フランスでは3歳からの義務教育化が真剣に検討されているし、ハンガリーでは2014年から3歳からの義務教育が始まった。「保育園義務教育化」は世界的に見れば突飛なアイディアでもないのだ。

p22
「園庭がない保育所」と聞くと悲惨なイメージが浮かぶが、「信頼できる保育士さんの家に子どもを預ける」と思えばいい。

p22
この本では「保育園」という言葉も広い意味で使っている。日本では法律上「幼稚園」と「保育所」という言葉が用いられているが、最近では共に「教育」を提供していたりどんどん差がなくなってきている。

p24
だけど、せっかくなら自分の子どもだけではなく、この国に住むすべての人の「レベル」が上がったほうがいいと思わないだろうか。/そうすれば、自分の子どもが付き合う友人や仲間の「レベル」も上がり、結果的に自分の子どもの「レベル」も上がりやすくなる。

p30
出生率が高く、子どもを育てやすい国として知られているフランスでは、ベビーシッターを使うことは当たり前で、国から補助金も出る。実際、3歳未満の子どもの約2割は、主にベビーシッターが面倒を見ているという。

p32
「そんなの心配ない。何でも文句つけたい人がいるんだよ」

p37
今の日本社会は、未だにこの「昭和の家族」をもとに、様々な制度が設計されている。

p44
国によってもアメリカやイギリスは母乳派が多いが、フランスは粉ミルク派が多いといった違いもある。

pp44-45
2011年の調査によれば、女性は一日平均7時間41分を家事に費やしているが、そのうち3時間22分は育児にあてていた。一方で男性はといえば、育児と家事を合わせて1時間7分。そのうち育児時間は平均わずか39分に過ぎない。

p50
(現にだいたいのお母さんは一人目より二人目、二人目より三人目のほうが育児が適当になっている)

p56
アメリカで実施された有名な実験によれば、良質な保育園へ通うことができた子どもたちは、その後の人生で「成功」する確率が高くなることがわかった。また、保育園へ通った子どもたちは、学歴と収入が高くなった一方で、犯罪率は低かった。

p57
育児書やインターネット上の情報には、実に思い込みと自分の体験談だけで書かれているものが多い。

p60
いくら信頼できそうな教科書とはいえ(ちなみに「信頼できそう」の僕なりの基準は表紙がださくて値段が高いこと)、ちょっとデータが古すぎる。

p61
中室さんが熱く語っていたのは、日本の教育政策には科学的根拠がとにかく薄弱なのだという点だ。

p74
行動経済学者の池田新介さんの研究によれば、子どもの頃、夏休みの宿題をギリギリまでやらず、休みの最後にしていた人ほど、借金が多く、喫煙傾向にあり、肥満者になる確率が高いのだという。

p76
僕の周りにもダイエットが趣味になっている人がいるが、そうした人は子どもの頃に持続性という「非認知能力」を身につけることができなかったのかも知れない。

p77
よく勉強や仕事ができない人に対して、「努力が足りない」という批判がされる。しかし、「努力ができる」という「能力」は、子どもの頃に身につけた習慣に大きく影響されている可能性が高いのだ。/人が持つ価値観というのは、育ってきた環境に大きく影響される。社会学では、育ってきた環境によって培われたものを「文化資本」と呼ぶ。それには言葉遣い、趣味、立ち居振る舞い、感性なども含まれる。/この「文化資本」もやはり、恵まれた家庭に生まれたほうが身につけやすく、貧しい家庭の人はそうではないことがわかっている。

p85
なぜ多くの人が保育園に通ったほうがいいかというと、それは社会にとって「効率の良い投資」だからだ。

p85
アメリカでの研究からわかっているのは、大人に対する教育訓練は思ったほどの成果を生んでいないことだ。

p100
「サラリーマン」と「専業主婦」は1960年から1990年頃の、日本経済が好調だった時代の産物だったのだ。それは日本の伝統でも何でもない。

p109
会社でも同じだろう。急成長を遂げる会社は普通、高齢者が少なく、若者が多い。一方で、いまいちぱっとしない会社や業界は、どこも高齢者が多く若者が少ない。

p119
フランスの少子化政策や社会の状況を聞けば聞くほど「そりゃ、子どもも増えるだろう」という気がしてくる。要するに、子どもが大人になるまで、お金に悩まされることがなく、ストレスなく育児できる環境が整っているのだ。

p122
僕が統計分析に関して一番信頼をしている柴田悠さんという社会学者がいる。社会学者にはいじわるな人が多いが、彼は例外的に超いい人だ。

p122
保育サービスなどの拡充によって、働く女性が増えた時に、その国は経済成長率が上がるということだ。

p127
当たり前の話だが、人は「性欲」という欲望だけで子どもを産むわけではないのだ。

p128
世の中のほとんどの出来事には、統計や調査がある。たとえば趣味で「サザエさんジャンケン学」というホームページを運営、ひたすらアニメ「サザエさん」のジャンケン結果を蒐集している人がいる。

p132
この国の若者たちは、たかだか30年前には、ミニ・スカートのブーム一つで大騒ぎできていたらしい。

p134
宋さんによれば今も男性向け雑誌に載っているセックス記事は嘘だらけだという。とにかく女性を攻めればいいとしか思っておらず、肝心な女性の視点がないがしろにされているというのだ。

p135
コラムニストの堀井憲一郎さんによれば、「クリスマスが恋人たちのもの」になったのは1983年のことだという。

p137
クリスマス前に「プレ・プレゼント」を送ったり、女のコに電話をしたら、会話をする前にすかさずオルゴールでジングルベルを聞かせたりするのがいいとか、そういううざいことが当時は受けていたらしい。

p138
信憑性の乏しいアンケートを根拠に

p142
翻って現代は、セックスや女性が随分と身近なものになった。たとえば、昔に比べて異性の友人がいる若者も増えている。1981年に異性の友人がいた男子大学生は約5割しかいなかったのに、2011年では8割近くにまで増加している。/多くの若者にとって「女のコ」はファンタジーではなくなったわけだ。

p143
コンドームやピルなど様々な避妊法がある時代に性欲と子どもの数が直接的に関係しているわけがない。

p145
実は今、産業構造の変化によって、「男性」よりも「女性」に得意な職業が増加している。というか、昔ながらの無口の男性にとっては、本当に生きづらい時代になっているのだ。/これからはますます「女性の時代」になっていくだろう。

p149
また社会のムードもどんどん「女性的」になっている。ここでいう「女性的」というのは、「もう経済成長だけに邁進なんてしなくていいから、毎日を大切に生きていこう」という発想のことだ。

p151
一般職の募集に男性が集まるという事例も増えている。幹部にはなれないが、転勤もなく長時間労働も強いられない一般職が、男性にとっても魅力的なものになっているのだ。

p156
結婚を「永久就職」と呼ぶのは、「倒産率3割の会社に入って喜んでいるようなもの」だ。

p157
「女らしさ」を求めるのもセクハラなら、「男らしさ」を求めるのもセクハラ

p161
「義務教育」と呼ぶことで、子どもを保育園に預ける時の「後ろめたさ」を感じてしまう人の、抵抗感を軽減できると思ったのだ。/国までが根拠がないと認める「三歳児神話」だが、「小さい子を保育園に預けるのはかわいそう」という偏見がまだまだある。/また、ベビーシッターを使うことに理解が得られなかったり、育児を「外注」することに、この国では抵抗感がまだまだ根強い。/一方で日本は「お上」の言うことには比較的従ってしまう国だ。特におじさんにその傾向が強い。/顕著な例が「クールビズ」だ。/少し前まで日本のサラリーマンたちは灼熱の夏でもスーツにネクタイをするのが当たり前だった。それが「クールビズ」という「お上」からの号令によって、夏の日本には男子高校生の制服を着たみたいなおじさんが溢れることになった(褒めてます)。/みんな「国が言うから仕方ない」「上が言うんだから仕方ない」と、堂々と軽装の言い訳ができるようになったのだ。

p162
「保育園」も「義務教育」とすれば、「国が言うから仕方なく保育園に行かせている」という言い訳を誰もが堂々と使うことができる。ここは「女性」ではなく、「国」が悪者になるべきだ。

p163
夏休みの宿題がぎりぎりまでできなかった子どもほど、大人になっても計画性がないことがわかっている。

p170
ゼロか百かの議論をしている余裕は、現在の日本にはないだろう。/都会に暮らす限り、誰もが庭付きの家に住めるわけではない。家庭と保育園の「庭」にこだわりすぎると、都会で育児をすることがそもそも無理ということになってしまう。

p175
就学前の子どもには年間約100万円しか支出されていないのに、100歳の高齢者に年間約500万円が支出されているという試算もある。

p178
税金を「高い」と思うか「安い」と思うかは、「税金がきちんと使われている」という実感と関係していることもわかっている。

pp180-181
こんな風に「社会は変わってきたんですね」という話を、社会学者の上野千鶴子さんにしたら「社会は誰かが変えてきたんです。自然現象みたいに言わないで欲しい」と怒られたことがある。

p184
「37.5度」とは、一般的に言われる子どもを保育園や幼稚園に預けられる体温のボーダーライン。子どもがその体温を超えてしまうと、親(多くの場合、お母さん)は仕事中であろうが、保育園まで我が子を迎えに行かないとならない。

【誤植】
p35
誤:以外と多い
正:意外と多い