p58
ラポート(rapport)は、「お互いに親しい感情が通い合う状態。うちとけて話ができる関係。信頼し合う関係」です。

p73
離婚や別居で夫婦が生活の場を分けた時に、単独親権制度の日本の民法では、親権を有するものが、子の養育に関して一切の権利を有することになります。親権を有しない親は、子の監護、養育に関して、ほとんど行使する権利を持ちません。[…]欧米では共同親権が主流であり、離婚後も両親は子の養育に関して義務を放棄することはできません。子どもの権利条約に謳われる子どもが両親に愛される権利を保障するために、別居している親も子に対する面会・養育を義務付けられます。[…]日本ではこのあたりが随分異なります。離婚が親子の生き別れになってしまうことも少なくありません。

p88
「 DV 防止法」に書かれている支援に従って援助するということは、離婚をすることが、まず前提になってきますから、DV 被害者と名乗る妻が離婚を決意しなければ、援助者は何も手を出せず、助けることができないようになっています。

p118
これまで述べてきたように、DV 防止法は家族の再生を選択した当事者たちを想定していません。つまり、「最初に離婚ありき」が前提となっていますから、DV 問題の根本的な解決策になっているとは言えないのです。ですから DV 被害者たちと家族をより一層苦しめていくものとなってきています。

p127
妻に対して突発的に暴力を振るってしまった夫が妻に出ていかれた後、自分の気持ちを向ける矛先を見失ってしまい、家族崩壊という危機的な状況に陥ってしまった場合の一時的な避難所を、シェルターと考えるならば DV 加害者のためのシェルターも、用意される必要があるということです。

p129
妻は経済的自立を目指し、夫は家庭的自立を目指し、お互いが依存しなくてもよい関係を築いていくのです。

p130
夫が妻に手を挙げてしまう背景には何かしら、積み重なったストレスや生活習慣のボタンの掛け違いがあるといえるでしょうから、カウンセラーは法律に縛られた思考だけに頼らず、両者の気持ちを落ち着かせて、お互いの話に耳を傾け、家族の問題として解決に挑むことが大事であると考えています。

p134
世の中、資格社会でありますから、何か肩書があるだけで相手が安心し、話に耳を傾けることが多々あります。しかし、援助者が偉い人やお金のある人、権威や地位や名誉に振り回されては、クライアントとの信頼関係を得ることはできないでしょう。

p172
DV 加害者が女性であることも、DV 被害者が男性であることも、当たり前になってきました。こうなってくると、誰にでも DV 加害者と呼ばれる日がやってくるかもしれません。

p175
今の傾向としてはやや女性の立場が強くなりすぎて、夫婦喧嘩全般を DV に置き換えやすくなりました。しかし中には、ほんとうに夫に殺されかねないような暴力に、日々怯えて生活している人もいるのではないでしょうか。

p193
児童手当は調停中や離婚が成り立っていない場合、子育てをしていなくても世帯主名義(たいていは夫)の口座に振り込まれるようになっています。別居して子どもと生活していても手渡しという形では、児童手当は入りません。