p5
取材を重ねた後で分かったことだが、話題になっているキーワードを複数入力して検索することは 「インターネットの罠」にかかるリスクを高めていた。なぜなら、歯科クリニックのホームページを作成する業者は、SEO(検索順位を上げるための対策)はもちろん、患者の指向性、業界のトレンドなどを研究して巧妙にタグを埋め込み、新規の患者をおびき寄せているからだ。

p39
日本の歯医者さんは、こういうクオリティチェックを非常に恐れていますね。

p56
日本の歯科業界には患者のために行動を起こした人を、潰そうとする風潮がある。患者の健康よりも、自分たちの利益を優先しているからだろう。それでも、こうした圧力に屈せず、信念を貫く人も存在していることに、私は救いを感じた。

p62
日本は今でも “歯を磨け” って言うてますけど、予防歯科先進国は、まずデンタルフロスでっせ。

p81
アメリカでは、フロス・オア・ダイというキャンペーンをやっていました。直訳すると “フロスをやるか、さもなくば死か” 。

p88
食品表示基準で 100 グラム(飲料は 100 ミリリットル)中、0.5 グラムまで糖類が含まれているものも「シュガーレス」「ノンシュガー」の表示が許されている。

p117
現代医療は、「EBM(エビデンス・ベースド・メディスン)=科学的根拠に基づいた医療」が基本である。

p120
日本の歯科業界には、第三者の評価を受けないまま実施されている「独自の治療法」が、他にもたくさんあるので、注意していただきたい。

p125
日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会の専門医、指導医、認定歯科衛生士を選ぶ

p134
インプラント治療は、他の歯科治療とは次元の異なる高いスキルを要する。しかし、日本では歯科医師免許があれば、誰でもインプラント手術が可能で、未熟な歯医者のトラブルが続出。一部の歯医者によるモラルを欠いた対応に、患者が振り回されている。

pp166-167
アメリカのベストジョブ(人気職業)が なぜ歯科医師か知っている? ギャラもいいし、ストレス少ないし、社会的地位もいい。/それは歯科医師が、みんな勉強熱心で努力をしているからなんだ。勉強する理由は、“歯科医師免許の更新制” にある。州によって違うけど、勉強しないと免許が更新できな
いから、学会でも最新情報を必死に学んでいる[。]

p167
「インプラントのトレーサビリティ」と「歯科医師免許の更新制」__
この二つが実現できれば、インプラント治療の質は保証され、歯医者に対する社会の評価は変わるかもしれない。

pp179-180
「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして、取り扱わなければならない」/これはスタンダードプリコーションという、世界中に普及している感染予防の基本原則で、1996 年にアメリカの CDC(疾病管理予防センター)が提唱した。

pp201-202
最近では、感染予防を可視化するクリニックも増えている。/口腔内に使用する基本セットを、患者の目の前で滅菌パックから取り出す。グローブも患者に見えるように、新しいものをケースから取り出して装着する。/以前は見られなかった、こうした動作は、さりげなく感染予防に取り組んでいることを患者にアピールしているのだ。

p203
HP で感染対策を公開している歯科医院を選ぶ

p203
トイレの清潔度に歯科医院の意識が表れる

p215
歯科業界の取材を重ねた私は、ネットの口コミはまず信じない。その理由は、歯医者のところに「予約サイト」の営業がやってきて、「ステマ」のオプションサービス、を売り込む様子を聞いているからだ。

pp216-217
そもそも、“口コミ” が誰にでも思いつくような、あまりに凡庸な言葉で埋め尽くされているのは極めて不自然だ。/ “本当の口コミ” には、司法関係者がよく使う “秘密の暴露” がある。歯医者の口コミをわざわざ投稿する動機は、良くも悪くも “患者としての強い印象や体験” に基づくものだ。「先生が明るい、優しい、親しみやすい、親切丁寧」などの無難な表現しか並んでいない口コミが、自然発生的にたくさん書き込まれるとは考えにくい。他にも、/「歯の浮くようなコメントばかり並んで、批判的な内容が一切ない」/「投稿の日付が一定の時期に集中している」/という二つの要素が揃っていると、不自然さはより際立つ。

p225
「好評価だけの口コミ」は信用しない

p233
「予防歯科」を知れば知るほど、高額な自費診療ではなく、社会政策として行うべき医療
ではないか、という思いが募ってくる。

p243
口コミ&歯科サイト、ムック本、テレビ CM に登場する歯科医院は避ける

p244
「抜歯と診断」されたら、必ずセカンドオピニオンを受ける

p245
「早い」「治療費が安い」「いつも混んでいる」。この三つが、患者の評価基準になっていることが多いが、「治療の質や誠実さ」とは、全く関係していない。

p246
歯科治療以外のサプリ、ビタミン C 点滴を扱う歯医者は危ない/最近目立っているのが、「ガンに効くサプリ」「ガンに効果があるビタミンC点滴」などに手を出す歯医者だ。いずれも科学的根拠は全くないし、詐欺的な行為に等しい。/このような歯医者は、本業の歯科治療も信用できない。

p249
いつも混んでいる歯医者は、「行列効果」を狙っている場合もある

p249
広告が目立つ歯科医院に注意

p252
もう一つ気になったのは、「歯」に対する患者と歯医者の温度差だった。「歯は身体の一部」であるということを忘れ、安易に歯を抜いてしまう歯医者があまりに多い。