私はセミナーや講演会に参加するのは結構好きだ。勉強は本でもできる。でも「場を共有する」ことで、単なる情報伝達以上のものとなる。第一線で活動している人やプロの話を聞くと、言語以外で伝わってくるエネルギーでモチベーションアップの場にもなる。コネクションができることもあるだろう。

いつも参加している DTP セミナーの「DTP の勉強部屋 勉強会」。第 49 回勉強会は新型コロナウイルスの影響でオンラインで開催された。

第49回勉強会 | DTPの勉強部屋 | study-room
https://study-room.info/dtp/dtp049/

DTP のセミナーのようなアプリケーションの画面を見ながらの解説は、セミナー会場でスクリーン(プロジェクターに投影されたもの)は見にくい。少しでも距離が離れると小さくなるからだ。

また、大都市に住んでいない場合、セミナーの数が限られる。私が住む名古屋は比較的セミナーが開催されているとはいえ、東京には圧倒的に劣る。東京で参加したいセミナーがあってもなかなか行けない。

だから、新型コロナウイルスで否応なしにオンライン・セミナーを始めることになったイベント主催者は多いと思うけれど、参加者にとってオンラインはオンラインでいいことがあると思う。自宅でじっくり映像を観られるし、日本中から(そして世界中からも)参加できる。チャットシステムを使えば気軽に質問もできる。

「DTP の勉強部屋 第 49 回勉強会」はライブ配信で行われた。事前に配信用ページのユーザー名とパスワードがメールで届くので、当日はそこにアクセスする(ベーシック認証っぽい)。配信動画は1ヶ月間はアーカイブを見ることができる。

ライブ配信ならではなのは、コメントを書き込める点だ。slido というサービスでコメントを送られるようになっていたが、配信ページとは別ページなのでパソコン以外で見る人には使いにくいと思った。私は Mac で視聴したので、ウィンドウを並べることができた。

Slido – Audience Interaction Made Easy
https://www.sli.do/

slido はデフォルトでは「Popular」というタブでの表示となっており、イイネボタンが多く押されたコメントが上位に表示される。しかし、Recent のタブをクリックすることで、最新のコメントがトップに表示され、投稿のたびに自動スクロールする。ライブ配信ではこのほうが見やすいはず。インターフェースが英語だし気付かない人も多いと思う。また Poll(投票)機能もある(今回は使われなかった)。

私もいくつかコメントを書いた。質問のようなものも書いたら、ちゃんと発表者にコメント返しをしてもらえた。

いつものように Twitter のハッシュタグが用意されているので、そちらでつぶやく人も多かった。質問や運営側への伝達は slido 、個人的なつぶやきは Twitter でやる、というようにみんな自然と使い分けをしていたようだ。

#studyroom049 – Twitter Search / Twitter
https://twitter.com/hashtag/studyroom049

今回は3つのセッションに分かれており、Session 1 が Photoshop、Session 2 が Rush、Session 3 が Illustrator についての講義だ。すべてアプリケーションのテクニック紹介となる。ホストは名古屋にいるが、Session 1 と 2 は遠隔(自宅っぽい)からの中継で、Session 3 だけは名古屋からの配信だ。

定刻になって Session 1 の配信開始と思いきや・・・音声がエコーのようになるトラブルが発生。30 分経っても解決しなかったので、そのセッションは後日録画されたものが配信されることになった。遠隔からの配信という、やや複雑な配信なので事前に十分にチェックをしたり、バックアップ体制を整えておいたりしなくちゃね。とはいっても、トラブル対処の様子をみんな温かく見守っていた感じ。

録画配信は後日かなと思いきや、当日の夜にはアップされた。仕事が速いのはいいね。さっそく視聴。Photoshop の進化っぷりがすごい。と同時に、歴史あるアプリケーションゆえにノウハウが埋もれていることも知った。逆に昔の解説書を読むと勉強になったりするみたいだ。

次の2つ目と3つ目のセッションは配信がうまくいっていた。2つ目のセッションは映像も音声も綺麗だったし、そもそもプレゼンターが動画配信に慣れているようで、とても見やすかった。

Rush は iPad の動画制作アプリだ。私も Rush を今まで時々使っていたけど、結構高度なことができると知った。もちろん Mac の Adobe Premiere Pro を使えばより複雑なことができるけれど、Rush だけでも十分できてしまう。もっとこれからも活用してみよう。

3つ目のセッションは Illustrator のテクニック紹介だった。今回見たのはまさに「職人」「プロ」といった感じで刺激的だった。普通の人ならどうやって描けばいいか分からないようなイラストも、スイスイと描いていて、職業として Illustrator を使う人は別格だなと思った。

もう一つ、オンライン配信セミナーのいいところは、自宅マシンでアプリケーションを試しながら視聴できること。セミナー会場だとパソコンを持ち込んで、周りの人に気を使いながらパソコンを使う必要があるが、オンラインだと自宅で気軽にパソコン作業ができる。すぐに自分の環境で実験して Twitter で共有している人もいて勉強になった。

今回もいつものように復習をして自分のものにしよう。映像を観て復習できるのでいつもよりやりやすい。単に映像を見て分かった気になるだけじゃなくて、ちゃんと自分で手を動かして再現するようにしよう。

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今回ふと思ったことがある。私は DTP をそれなりに勉強してきたが、まだ本腰を入れているわけではない。必要に迫られて騙し騙し使っているだけだ。

体系的な知識がないので、そろそろ本腰を入れて勉強しようかなと思うところだけど、「ちょっと待った」と自分に言いたい。

DTP は奥が深い。中途半端に勉強しても単に「ちょっと DTP 作業ができる人」で終わってしまうと思う。かといって、専念するほどでもない。私にとって DTP は職業として使うのではなく、ツールとして使うにすぎない。必要に応じて DTP スキルを発動したいだけだ。中途半端に延々と勉強するだけだと、泥沼化すると思う。

例えば動画系 DTP は今後需要が増えるだろう。逆に言えばみんなが群がっているので、そこで抜きん出た存在になるのはますます難しい。

Photoshop はデザインスキルに加えアーティスティックなセンスがないと難しそう。良し悪しの基準が素人には曖昧で、私には向かない。

Illustrator はアプリケーションの変な挙動に左右されることが多い。職人技と言えば聞こえがいいけれど、なんだか抽象度の低いテクニックの寄せ集めに振り回されている気がする。

私は InDesign が結構好き。DTP の中でも Illustrator や Photoshop のような華やかさはない、地味なアプリケーションだけど、「努力が報われる」感がある。成果物のイメージを明確に持ちやすいから、何をしたいかがはっきりしている。体系的に学びやすいのだ。

幸い DTP を勉強している人で InDesign 好きは少ない印象なので、ブルーオーシャンでもあると思う。極めれば価値ある存在になれそうだ。私の場合、InDesign こそ本格的に勉強したい。

私はここ何年か、子どものころ好きだったことを再度挑戦している。けん玉、ルービックキューブ、チェスなどだ。

けん玉は運動神経がネックになると気付いたし、最終的なゴールが見えにくい。ある程度のところまで行った時点でもうやらなくなった。

チェスは確かに面白いんだけど、これこそ一生をかけてやるような奥が深いゲームだ。中途半端にやると「ただのチェス好き」から抜けられないまま終わってしまう気がする。

ルービックキューブはどうか。私はそこまで奥が深くないし、努力が報われる遊びだと思っている。勉強&練習をすればするほど、ある程度のところまで行けるだろうし、ルービックキューブは単に揃えるだけも、普通の人からすれば十分「すごい」。やりがいがあるんだ。

私にとって、けん玉は Photoshop、チェスは Illustrator、ルービックキューブは InDesign のイメージだ。

私はやりたいことがいっぱいある人である。それはたいへん幸せなことなんだけど、あれもこれも手を出していたら結局すべてが中途半端で、何もできずに終わると思う。だから、将来性や希少性があるか、努力が報われるかどうかということをじっくり考えてから、戦略的に選択し、集中して取り組みたい。