[読書メモ]『青空文庫で社会学』

p9
僕が一つだけ人に自慢できるのは、「逃げる」っていうことかな。すぐいなくなっちゃうっていうのが天才的にうまい、自分で言うのもなんだけど。

p12
K 僕と先生で議論をすると、いつも僕が勝ちますよね。
W そうかな。気のせいじゃないかな、それは。

p13
K 弱いところだけが強みってそれは先生も[小説と]同じですか?
W 僕もそうですね、「価値の転倒」というか。それしか拠ってきたる方法がない。

pp19-20
学校のなかで、ああいう小説を読むというのが、すごくスリリングでした。場所と本の内容が極端にアンバランスで。

p26
今は、特別な場合じゃないと「異見」って書きませんよね。でも昔の「異見」の方が、定義からしたら適していると思うんですけどね。「いけん」っていうのは、人が何か言って、それとは違うんだよって言うものですよね。

p29
老子の言葉で「足るを知る」ってありますけど、今あるもので満足することを諦めと言い換えることができると思うんですね。

p34
これは男子も女子もそうなんだけど、凝った立派な名前が多いですね、最近。

p34
社会学の用語に、ウォーミングアップ/クーリングアウトっていう言葉がありますね。ウォーミングアップは、若者に学歴(学校歴)取得を通じた階級上昇をするように発破をかけることで、クーリングアウトは反対にそれを諦めさせることです。野心の引き上げと、野心の引き下げっていうのかな。学校っていうのは、その両方をする機関だとされてきました。

p34
学校や社会の都合のいいように子どもを諦めさせたり、諦めさせなかったりすることは、今の社会秩序を維持するために必要なことだったりするんですね。

p36
コネって、社会学の用語だと関係的資源っていう言葉になります[。]

p64
iPhone ですけど、便利です。僕は電車のなかとかで、ずっと何かを読んでいる方ですけど、読む物がちょうどなくなってしまったりしたときに、心強いですね。

pp70-71
僕は最近、犯罪や非行が起こったとき、「原因や理由は行為を越えられない」ってよく思います。その傾向は以前より強くなってきているんではないでしょうか。まず行為の悪質性が問題とされ、そのことにどんな原因、理由があろうと認められない。もちろん、マスコミやネットなんかで犯罪行為の原因は詮索されるけど、それは、犯罪者がいかに悪いことをしたかの証拠集めにすぎないように思います。「こういう事情があったんだから仕方なかったんじゃないか」「やったことは悪いけど、考えていることは良いじゃないか」というようには決してならない。「猿蟹合戦」が成立しない。

pp77-78
「彼は努めてなんにも考えないようにしていた」というところ、よくわかるなあ。つまらないことは、いくらでも考えられるんだけど、本当に考えなきゃいない重要なことは避けて通って、最後にどうしようもなくなっちゃう。破滅型の人生ですね。

p103
「反省というものは、なにかしら個人的で自己本位的なものをもっている」

p116
よくはしりませんけど、きっとあるんでしょうね。世界は広いので。

p124
僕は、20 代、30 代の頃、ほとんどお酒を飲まなかったことを、今になって、すごく後悔しているんです。あんな楽しいことないじゃないですか。別人になれるし。

p141
[田舎は]一言で言うと、「若い人が都会に出たがる気持ちは、よくわかるなあ」ということでした。人と人との距離が都会より近いというか親密で、僕は苦手でした。人口密度は高くないんですけどね。自由度が低くて、いろんな抑圧が出てくるんだけど、どうしようもないので、結局我慢するしかない。それしか解決方法がない。「長いものには巻かれろ」というのかな。

p142
「我慢が大切」という主張が受け入れられやすいという傾向は、戦後 70 年近く経っても全然変わってないんですね。「国民みんなで我慢しよう」って。

p169
他人からアブノーマルだと言われるのと自分でそう言うのでは、意味合いとしては逆でしょう。

p170
映像化されて誰が具体的な女優さんが演じてしまうと、また印象も違うんでしょうね。

p183
僕は中学生のとき、この悩みを誰にも打ち明けなかったから、周りの大人は、「進学とか勉強の悩みで暗い顔してる」と考えていたんじゃないかな。「本人じゃないとわからないことってあるな」と、そのとき思ったことを覚えています。

p187
笠原さんは、「われわれ成人が心しなければならないことは、われわれの今日の文化があまりにも社交的外向性に人格的魅力のポイントをおきすぎる、いわばセールスマン的文化だということだろう」と書いています。[…]むしろ、社会の方に問題があるのではと見ています。

p208
きっかけは、当時先生がしきりに「青空文庫はすごい」、「これで死ぬまで退屈しない」とか、よく意味のわからないことをしゃべっていたことですが。

p209
常識にとらわれていないと自負する社会学者も、その多くは常識にとらわれている。だから、二流の社会学者の本を読むよりも、一流の文学作品を読んで、常識にとらわれることなく、人間や社会を見る目を養ってほしい。

p211
自分が生きることそれ自身が実験であるっていうのは、僕にとっても大きな生きる指針です。

【誤植】
p78
誤:本当に考えなきゃいない
正:本当に考えなきゃいけない

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