[読書メモ]『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』

【1】創元推理文庫

p67
スコット・エクルズは “二重姓”(英国ではいちおうの格式ある家系によく見られる)であり、そういう意味では、「・」ではなく、スコット – エクルズと「 – 」でつなぐべきかもしれない。

p85
孤独な暮らしをしている人間にありがちなことだが、彼女もはじめは引っ込み思案だったが、話の進むうちにひどく饒舌になってきて、船のスチュワードであるというその義弟について、問わず語りに細かなことを山ほど打ち明けてくれた。

p89
ぼくの名はいっさい出さないでほしい。ぼくがかかわるのは、解決に手間どるような難事件のときだけにしたいんでね。

p136
わが英国警察の刑事諸君は、知恵の点では少々頼りないところがあるにしても、勇気においては、いささかも掛けるものではない。いまその捨て身の殺人者を逮捕しに向かうグレグスン警部も、普段、スコットランドヤードの階段をのぼってゆくときとまったく変わらぬ絶対的な冷静さと、ビジネスライクな態度とをもって、目の前の建物の階段をのぼりはじめた。

p285
ホームズという男、電報で用が足りるかぎり、手紙はけっして書かない

p302
じゅうぶんな材料もないのに、ただ頭だけ使ってみても、エンジンを空ぶかしするようなものだからね。

p307
「きみもずいぶん詮索好きと見えるな、ホームズ君」

p340
おいおい、きみ、われわれは功利主義の時代に生きているんだよ。名誉なんてものは、中世的な概念じゃないか。

p362
「音楽的でないにしても、ドイツ語はあらゆる言語のうちで、もっとも表現力に富んだ言語だね」

p381
ホームズの命を受けたワトスンが行動し、終盤、姿を変えたホームズが姿を見せる、というスタイルは『バスカヴィル家の犬』などと同趣向である。

【河出書房新社】
p36
今の段階で、情報を基に事件の結論を出すのはまだ時期尚早だ。誰でも往々にして、自分の仮説にうまく合うようにと、事実のほうをむやみにねじ曲げかねないものだからね[。]

p56
こうした屋敷に以前勤めていたが、解雇されて深い恨みを抱く使用人ほど貴重な情報源はないものだが、ぼくもたまたま運良くそういう男を見つけたのだ。運良くといったが、もちろん、自分のほうでも見つける努力をしなくては見つかるはずもなかったがね。

p109
他のあらゆる可能性が成り立たないとしたら、どんなにありえないように見えても、残っているのが真実だ、という昔からの大原則に頼る必要がある。

p116
シャーロック・ホームズの性格の中できわだった特徴のひとつであり、つくづく感心させられるのが、頭の切り替えの早さである。仕事にかじりついていても能率よく働けないと、いったん悟ると、たちまちにして頭脳の活動を完全に休ませて、切り替えた全神経をひたすら気晴らしに向けることができるのだ。

p212
彼女たちの預金通帳は簡潔にまとめられた日記だ。

p248
ホームズの非凡な才能を、わたしは深く尊敬していたので、あまりよく理解できないときも、いつでも彼の望みに逆らったりはしなかった。

p279
いやあ、君、現代は功利主義の時代だよ。名誉なんて観念は中世の考え方だろ。

p322
「サー」の称号はファースト・ネームに冠するか、もしくはフル・ネームに冠する慣わしになっている。

pp334-335
《ウィステリア荘》のスコット・エクルズのように、アーサー・コナン・ドイルは社会的地位を持つ人間は、ある程度まで犯罪行為の容疑から外されると記している。容疑者の枠から社会的地位のある人物を事前に外すことで(この物語では、これが原因となって)、犯罪捜査の専門家は馬鹿げたハンディキャップを自ら抱え込むことになった。

p366
「目的を持たない、芸術のための芸術。あらゆる目的は、芸術を誤らせる」

p452
物語の唐突な幕開け

p455
問題は、人間が互いに妥協するということに対して、非常に臆病である点にあります。

【誤植】
誤:シェーンブルン宮
正:シェーンブルン宮殿

【河出書房新社『シャーロック・ホームズの思い出』】
p452
19 世紀初め、エディンバラの医学学校では、遺体はウィスキーに漬けられていた[。]

p455
“blue ribbon” とは禁酒の意である。

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