今月の読書会の課題作品はトーマス・ラッポルト『ピーター・ティール』だった。

課題作品は3回読み、そしてピーター・ティール『ゼロ・トゥ・ワン』も読んだ。

一番最初に「ピーター・ティールを知らない人は三流だ」と書いてあるけど、私は今回初めて知った。

でも Paypal なら知っている。というより、日常的に使っている。海外の商品を買ったり(最近は eBay でのショッピングも時々するし)、海外のサービスをよく利用するからだ。よく分からないウェブサイトに自分のクレジットカード情報を入力するのはこわい。信頼できるウェブサイトであっても、ハッキング等で情報が漏れることがある。そんな時、Paypal が使えると安心だ。「そんな Paypal を作った人」と思うと素直にすごい人だと思えてくる。

実際、私はワクワクしながら読めた。読書会は面白くない本ばかりがずっと続いていたが、久しぶりに面白いと思えた。私はフリーランスなので、ある意味起業家みたいなもの。ピーター・ティールの生き方は非常に参考になった。

さらに、自己啓発書的なところも、そういうのに乗せられやすい私はテンションが上がった。例えば「完全に打ちのめされるような失敗をしたとしても、それがどうしたと言いたい。もっとやりがいのある道はいつだって見つけられるんですから」(p33)など。

一番納得したのは、ゼロから1を作るのが大切であること、競争するのは負け犬だということ、フォーカスが大事であることなどだ。これはまさに私がビジネスで努めていることだ。

私は「ありそうでなかったもの、かつ自分が欲しいもの」を創造することをやってきた。著書だって「こんな本があったら読みたいな」と思えるものを書いてきたし、自分で読書会を開いたのも「こんな読書会に参加したいな」と思うものを開催した。存在しないなら自分で作っちゃえ、という精神だ。まさにゼロ・トゥ・ワンだ。これは意外と普通の人には難しいのかもしれない。私はサラリーマンを辞めたのも、辞めても自分で仕事を作れると思えた。普通はサラリーマンを辞めるという選択肢すら「絶対にあり得ない」と思うだろう。私にとってサラリーマンだった自分はコピペをするだけ__ティールの言葉で言えば1から n を生もうとしているだけ__だった。

こんな感じで、本書は自分のビジネスの目指す方向性を肯定されたような気になれたのでとても嬉しかった。

ただ、面白い本のわりに、読書会で話をするのは難しかった。おそらく著者が黒子に徹しているからだと思う。淡々とティールの経歴をまとめている。著者の意見が全然見えない。どう評価するかは読み手に委ねられている。経歴を見ただけで、そこから膨らまして何かを話すのは難しいよね。

読書会のテーブルでも、今回は本の内容を掘り下げて話すのはみんな難しかったようだ。だんだん飲み屋の会話のような緩い話になっていった気がする。

テーブルではどうしても本書のティールの生き方が「他人ごと」になっていた。資産のある人の話だしー、アメリカ人だしー、みたいな感じで、自分には関係ないと思ってしまうのは自然なのかもしれない。

でもあえて言おう。自分とは遠ければ遠い人の本ほど参考にすべきだ。結局自分に近い人の話というのは、日常の延長でしかない。現状維持を強化するだけなのだ。現状維持こそ諸悪の根源だ。前回読書会の『失敗学のすすめ』が面白くなかったのは、あまりに日本人的な枠組みの発想だからだと思う。

[読書会]『失敗学のすすめ』 | 読書ナリ
https://dokusho.nary.cc/2018/05/26/bookclub-shippaigakunosusume/

私が映画を観る際も日本映画を観るのが好きじゃないのは、日本的価値観や枠組みを強化されるものが多いから。できるだけ海外の、自分とは絶対に縁のないような物語から、あっと驚くようなアイデアを得たい。そんな物語を、自分に引き寄せて考えるのが好きだ。

だから、ティールの話だって、いくらでも自分の日常に当てはめて考えることができる。高い抽象度で物事を考えればいいのであって、細かい、自分はスタンフォード大学に行っていない、彼のような人脈がない、彼のようにお金がない・・・といった「言い訳」からは何も生まれない。

多少やる気のある人や感化された人は、ティールと同じ道を目指そうとするだろう。でも、ティールになろうとしても、それはフォロワーにすぎない。要するに、誰もティールにはなれない。ましてや、おこぼれに与(あずか)ろうとする人は、何も得ることができない。フォロワーになったり、おこぼれに与ろうとするのは、コピペであり、「1から n」にすぎない。

だから、フォロワーではなく、自分自身がプレイヤーになればいいんだ。自分から価値を生み出せばいい。ゼロ・トゥ・ワンだ。読書会でふと「ティールを越えたいですね(キリッ)」と言ったが、これは本気だ。ティールを目指せばただのフォロワーだけど、ティールを越えようと思った時点でいくらでも彼を越えるアイデアは浮かぶ。自分にティール以上のことは何ができるだろうと考えることができる。

ティールのように、人に自分についての本を書いてもらえるというのもかっこいいじゃないですか。ティールの場合、よその国の人(ドイツ人)に書いてもらっていて、海外の人に目を付けられている。ちょうど昨日、私も新聞社からの取材を受けた。自分についての本を書いてもらう第一歩が始まっている!?

そういえば、読書会でなかった視点が一つある。それは英語の問題だ。日本で今ブームのこと(IoT なり AI なり VR なり)はすでにアメリカの投資家は投資を回収済みなことばかりだ。今日本で流行っていることを追うのは、これもフォロワーにすぎない。日本はそれぐらい遅い。それは言語の壁があると思う。

最先端の情報はアメリカに集まる。それは英語情報だ。情報が集まり、ますます資本も集まる。だからこそ、我々は英語の情報をもっと取りに行くべきなのだ。逆に言うと、日本では英語情報をキャッチするだけで、簡単に抜きん出た人になれる。実は日本で知られていない海外のアイデアをちょっと真似するだけでも、ビジネスチャンスはいくらでもあったりする。フォロワーの人生を続けるか、実は目の前にあるチャンスを取りに行くかは、あなた次第だ!