[読書メモ]『シャーロック・ホームズの復活』

pp19-20
これだけのことを、モリアーティー教授が崖から落ちて、<ライヘンバッハの滝>の滝壺に没するまでのほんの一瞬の間に考えちまっただから、われながら、頭というのはずいぶんとすばしこく働くものだと思うよ。

p24
以上がその4月の宵(よい)、私が呼吸すら忘れて聞き入った、ホームズの驚くべき物語の一部始終である。

p24
「仕事こそが悲しみへのまたとない解毒剤だよ、ワトスン」

p57
まあいいでしょう、ホームズさん。あなたになにか要求されて、断るのはむずかしい。

p68
残念ながらわが英国の陪審員諸君は、レストレードの並べてみせる事実よりも、空論としか思えないぼくの説のほうに重きをおいてくれるほど、知的に成熟しているとは言いがたいしね[。]

p76
「いまは食べ物の消化のために使えるエネルギーも神経もないんだ」というのが、医師としての私の忠告にたいするお定まりの台詞である。

p92
悲しいかなこの男には、真の芸術家の稟質(ひんしつ)__つまり、どこで絵筆を擱(お)くかを心得るという資質__が欠けていた。

p102
まことにりっぱな人物だった。古き良きイングランド精神の鑑(かがみ)とは、こういう男のことだろう__単純かつ素直で、しかも温厚、大きく、誠実そうな青い目に、幅の広い端正な顔__その面(おもて)全体に、妻への真摯な愛情と信頼感とが輝きわたっている。

p115
マーティン警部はなかなかの良識の主(ぬし)と見え、その後の捜査にあたっては、万事、私の友人の裁量にまかせて、自らはその結果を丹念にメモするだけで満足していた。

p129
マーティン警部も、私も、ここまでの話をほとんど呼吸さえ忘れて傾聴していた。

p211
これまでだってぼくらは、もっと難解な問題でもちゃんと解決してきたじゃないか。

p265
いつの場合も、べつの可能性というものを考慮に入れて、それへの備えをしておく。これぞ犯罪捜査の常道であり、その第一歩でもあるんだがね[。]

p292
ひとりの女性が必死に救いをもとめているときに、紳士たるもの、身の危険なんてものをさほど重視すべきじゃないと思うんだが、どうだい?

p294
もう何年もひとつの部屋を共有してきた仲なんだから、最後もひとつの獄房を共有する、これもあるいはおつかもしれん。

p326
いや、きみはどんな点でもぼくに影響されることがあってはならない。きみはきみの道を行き、ぼくはぼくの道を行く。あとで結果をつきあわせれば、双方がたがいに補完しあうというわけだ[。]

p353
ベイカー街という快適な環境を離れてからというもの、私の友人はずっと機嫌がよくなかった。愛用のスクラップブックや、化学実験の道具ばかりでなく、身の回りに心安らぐ乱雑さが欠けていると、どうにも落ち着けない性分なのだ。

p366
物静かで、謎めいたところがありますが、これはたいがいのインド人がそうでしょう。

p469
そこに犯罪がからんでいるのでないかぎり、それを表沙汰にするのはぼくも好みません。なるべく内輪の問題として、そっとしておきたいという考えです。

p497
いまぼくらが目前にしているのは、ひとりの傑出した人物の手になる芸術品なんだ。

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