[読書メモ]『イギリス型<豊かさ>の真実』
p14
この4分の1程度の費用で済む、ポーランドやハンガリーまでわざわざ出向いて治療を受ける「デンタル・ツーリズム」の利用者も、増える一方であるという。
p20
資本主義の総本山として「自由な市場経済」を信奉する米国では、税金による富の再分配という考え方は、もともと人気がなかった。貧困をなくすための方法は、大量生産で安価な製品を生み出すことにより、物価を低めに安定させれば事足りる。/この底流には、税金を高く取って福祉を手厚くして行くと、福祉に頼って働かない層までが手厚く保護されることになり、真面目に働いて資産を築いて行く層に対して不公平となる上に、経済全体を活性化させて行く上でも足かせとなりかねない、という考えがあるわけだ。
p29
英国の税制はかなり簡素化されていて、配偶者控除や扶養控除のようなものはない。
p73
しかし医療という行為は、それ自体としてはなにかを生産するわけでもなければ、誰かを楽しませるわけでもない。また、病気で動けなくなるということは、すなわち社会的な生産活動に参加できなくなることを意味する。/つまりは、普通の経済活動と同列には考えられない。いや、考えてはいけない事柄であるはずなのだ。
pp76-77
英国では、昔から家族とは基本的に夫婦のことだと考えられており、子供が成長して自分で稼げるようになれば、家を出てそのまま離散してしまうのが当たり前だとされていた。
p85
まず病欠の扱いだが、俗にセルフ・サーティフィケート(自己申告制)と言って、風邪などちょっとした病気で欠勤する場合、最長3日(企業によっては4日)までは、意志の診断などを提出しなくてもよいことになっている。この場合、給料を減らされることも、年次の有給休暇の残り日数が減ることもない。病欠と休暇は、あくまで違うのだ。
p99
読者諸賢はすでにお気付きのことと思うが
p118
ブレア政権のスローガンとして有名になったのが、「NHS は英国民のクラウン・ジュエルである」というものだ。/クラウン・ジュエルというのは、王冠の正面についている一番大きな宝石のことで、日本風に言うなら「家宝」だろうが、「決して手放してはならないもの」のたとえとして、昔から使われている表現である。文脈にもよるが「武士の魂」とでも意訳した方が分かりやすいかも知れない。
p120
タイム・トゥ・チェンジ(政権交代の時期)
p181
60 歳以上になると公共交通機関がすべて無料になるなど、様々な特典が得られる。
p195
日本の病院は、クレジット・カードをまず受け付けない。
p196
これは政策の違いなどではなく、「人間はどのような社会で生きるべきか」という世界観の違いに起因するのではないか、と考えるに至った。