[読書メモ]『別のしかたで』
p6
偏った意見をごり押ししてくれる本のほうが、こういう手があったか!と参考になる。
p9
相手の力量を低く見積もって批判する人間というのは、基本的にアホである場合が多いんですね。論戦は、相手をできるだけ「持ち上げ」ながら行わなければならず、実際の相手がそれに見合わないとしても、「持ち上げ」た上での(仮想的に強化された)相手をぶっつぶすのでなければいけません。
p17
翻訳空間を考えた上で、日本語独特の、翻訳不可能なレトリックをうまく使うこと。日本語で書くことの独特の意義をもたせること。
p29
完全エネルギー切れのときは、メシを腹一杯食べないのが大事という経験則。復活が遅くなる。
p30
僕も、新しい仕事のたびに形式の発明を試そうとしています。
p43
罰ゲームを賭けて何か勝負をするという楽しみが、僕にはさっぱり分からない。
p44
先行研究は読まなくてはいけない。が、アイデアが固まるまでは、読みすぎるな。中二病でいいから、一次対策について自分のアイデアをいったん固めろ。
p50
高校時代まで消せる筆記具でキレイにノートをとっていて、大学に入ってもちょっとそれをしていて、そのうちボールペンになり、書き損じても消し線を付けたり潰したりするので平気になったら、大人になった証拠である。
p53
学力が伸び悩んでいて、かつノートがとてもキレイという人がいたら、ノートをもっと雑にしたらどうだろうか、とアドバイスしたい。[…]きちんと分割された領域に、しかるべき順序で収めようとするのは無駄に脅迫的になりがちかなあ、と。
pp54-55
どんなにアカデミックに誠実で、歴史をふまえたことをきちんと言っても、誠意が伝わるどころか、アカデミズムの外の人には、その「まじめっぷり」がかえって悪印象になることもある。
p55
学術論文を書くことは苦しい。肝心の言いたいことを存分に開放するまでの準備として、それほど書きたくもない前段階の説明をくどくど積み上げなくてはならないから。「説明ゼリフ」っていうやつですね。僕はそれが嫌なので、まず確信を示唆してから、推理小説っぽい仕立てにして書く。
p59
汎用性がとても高くて、立ち上げてすぐどうしたらいいか途方に暮れるようなアプリは、旧時代に属している。新時代は、あえて有限化する。これはアップルが iPhone と IPad の狭い画面で何ができるかということを考える過程で、しだいに積極的に打ち出してきたことだろう。
p71
ちょっとでも批判できそうなことを見つけたなら我先にと批判するってのは、嫌いなのよね。美徳的でない。でも、「批判的思考」が人文学の命だと思っていることはもちろんなのです。このことと、我先に批判するってのは必ずしも一致しないと思う(思いたい)のね。
p72
セクマイの人が排外的なこと言っているケースってけっこうあるのよね。そのガッカリ感ってね……。
p73
親は子供に勉強しなさいという。でもそれは、世間にうまく内在して稼げるくらいに勉強してほしいってことですよね。ラディカルに世間を批判できる学力を得てほしいとは思っていない。ディープな勉強はしてほしくないのよ。というか、ディープな勉強などということを知らないケースが多いのだと思う。[…]ラディカルに世間を批判できるようになる程までには勉強してほしくないのであれば、初めから「勉強しろ」などと言うな。お受験などさせるな。
p79
或るルールの中でできるだけのことをするってのはどうも苦手。すぐに勝手に「別のゲーム」を作りたくなる。
p80
関西の状況(大阪のアジア的喧噪、京都の差別的な分割)の方が、たぶんグローバルには「ふつう」で「本来的」であり、東京ってのはそこから派生した「巨大な郊外」なんだろうということ。
pp82-83
特殊な言い方で表現しようとするときに、「変な言い方ですが」とか「言葉は悪いですが」とか「勝手な解釈ですが」とか言っている限り、素人さんの世界から出られない。留保なしにズバッと言うべし。[…]とくに、大学のゼミで、これは自分の勝手な解釈かもしれませんが、とか前置きを言う人がよくいる。即刻やめなさい。物書きとしてやっていくには、多少勝手な解釈でもそれに説得力をもたせるテクニックを鍛えなければならない。ゆえに、退路を断たなければならない。
pp93-94
男性連中がどっかりコタツに座っていて、女性たちがお茶やらおつまみやらを出してくれるっていう構図のなかに入ってすぐに消耗した。
p94
祖父母がやたら飲物や酒を食え飲めと言うのを、そんなにいらないから、ダイエットしてるから、と流して断るのだが、ああいった歓待は、優しさであると同時に、この場では自分たちがホストであるという権力のアピールでもあると思われ、とにかくそれに巻き込まれたくないと思うのだよな。
p94
定型表現を惰性的に使わないこと。
p105
僕の留学中、パリ 10 の授業でとくに印象的だったのはラリュエルの授業。人格的にいい感じのお爺さんだった。アジア系の留学生も多い教室で、初回の授業で、「Vous, philosophes,」(哲学者のみなさん!)と語りかけられたのをよく覚えている。オープンマインドなお爺さんだった。
p124
僕の勉強経験では、とくに入門書の類ほどちゃんと買ったほうがいいと思うのね。入門書は借りて済ませて、本格的な文献は買う、というふうに分けるのではなく[…]。入門書もあちこち書き込みをして読み、読み返す。
p124
本に書いてあることを身につけようと思ったら、本を汚さないようにキレイに読んで後で古本屋にできるだけ高く売ろうとか思ってたらダメですから。参考程度に読むものは別として、身につけようとする本(教科書がその代表)への出費は、これはもう出すしかないと諦めるべき。
p127
「着ぐるみん」と呼ばれたあのスタイルは、オーバーサイズものを着ることによる幼児性&不良性の誇張、という日本ヤンキーファッションの伝統に則(のっと)っているものだったと思われる。
p139
勉強が嫌い、というのは、自分を変えたくないということだと思う。そして勉強嫌いが多いのは、今の自分でまあいいかという人が多いからだろう。別人のように変わることは、恐ろしいことなんだろう。勉強することは、変身の恐ろしさのまっただ中にダイブすることだ。
p139
大学は「人材」などをつくるところではないというツイートがあったんですが、つまり、人間を労働機械にするとこじゃないわけですね。企業が押しつけてくる労働道徳に対して、は?アホじゃね?と冷ややかであることがデフォルトの人間を育てる、それが教養教育である。当然のことです。
p149
ノートは「リゾーム状」にとるべし。中心アイデアは、二、三個とかあっていい。
p180
消費って、カネで交換する対象ってことでしょ。こちらのお料理は、とか、大切な具体物っぽく言うべきでしょう。