[読書メモ][Kindle]『世界史の極意』
あなたがビジネスパーソンならば、もっとも重要な基礎教養の一つは世界史である、と私ははっきり申し上げます。(Loc 89)
知識人の焦眉の課題は「戦争を阻止すること」です。そして、戦争を阻止するためには、アナロジカルに歴史を見る必要があります。(Loc 163)
アナロジカルに歴史を見るとは、いま自分が置かれている状況を、別の時代、別の場所に生じた別の状況との類比にもとづいて理解するということです。こうしたアナロジー的思考は、論理では読み解けない、非常に複雑な出来事を前にどう行動するかを考えることに役立つからです。(Loc 165)
知識人が「大きな物語」をつくらないと、人々の物語を読み取る能力は著しく低下する。(Loc 212)
帝国主義化した資本主義体制の国々は、戦後、社会主義革命を阻止するために、福祉政策や失業対策など、資本の純粋な利潤追求にブレーキをかけるような政策をあえてとるようになりました。(Loc 388)
資本主義システムを維持するほうが国家にとって得になるからこそそうするのです。(Loc 392)
二一世紀の帝国主義は植民地を求めません。それは人類が文明的になったからではなく、単に植民地を維持するコストが高まったからです。また、新・帝国主義は全面戦争も避ける傾向を持つ。全面戦争によって、共倒れになることを恐れるからです。(Loc 452)
かつて私が仕事をしていた外交の世界では、特定の対象を分析するときには、イデオロギーに目を眩まされずに、相手や対象がどんな意図や論理で行動しているのかを把握するのが重要でした。これを「対象の内在的論理を知る」と表現します。(Loc 510)
ヨーロッパの大学では、神学部がないと総合大学(ユニバーシティ)を名乗ることはできません。(Loc 1682)
ウクライナ危機の対立の背景には、こうした宗教の違いもある。つまり、フスの宗教改革、ルターの宗教改革は、遠く現代のウクライナ危機にまでつながっているのです。(Loc 1782)
しかし、神が心にいるという考えは危ういものを含んでいる。なぜかというと、神が心にいるとなると、自分の主観的な心理作用と神を区別できなくなってしまうからです。神は絶対的存在です。自らの心のなかに絶対的存在を認めることで、人間の自己絶対化の危険性が生じたわけです。/この延長上に、神なんて自分の心の作用にすぎないという無神論も出てきてしまいます。(Loc 1801)
では、EUはなぜ生まれたのか。その最大の目的は、ナショナリズムの抑制です。二度の世界大戦を経て、あまりにも大きすぎる犠牲者を出してしまった。ドイツ人もフランス人も戦争だけはしたくないと強く思って、それがEUという形に結晶しているわけです。(Loc 2023)
超越的な唯一神を極端に強調すれば、知的整合性を無視することができる。(Loc 2048)
啓蒙主義の帰結を反省して、あらゆる理念や概念を相対化した結果、人びとは何も信じることができなくなって、動物的に行動するだけになってしまう。いまや政治も経済も、動物行動学者の想定するような世界になっています。(Loc 2131)
いま世界で起きていることは、しょせんコップのなかの嵐であり、現行システムの調整だと私は思います。(Loc 2136)
近代の枠組みのなかで戦争を止めるには、近代の力を使うしかありません。それが私の言う啓蒙主義です。(Loc 2137)