[読書メモ]『アニメーションの色職人』
p71
家庭的雰囲気だったから人間関係が濃く、関係がややこしくなりがちだった。
p114
「その週の仕事が終わった土曜の夜中にオールナイトの映画を見に行って、館内が暗くなると同時に寝てたりもしていたわ」。/そんなに疲れているときに映画など見に行かなくてもと思う人もいるだろうが、そういうときだからこそ、仕事や生活と離れたことをして気分を転換したいものなのだ。たとえ寝てしまっても「映画を見に行った」というだけで気が晴れたりする。
p149
ジブリは、設立当初、「一本成功したら、次をつくる。失敗したらそれで終り」という考えで始めた。鈴木さんは「ですから、スタジオの場所だけは確保しておくけれど、リスクを軽減するために、スタッフも社員として雇わず、作品ごとに七十人ほどのスタッフを集めて、完成すると解散するというスタイルを取りました」と言う。
p195
しかし、宮崎さんが「良質な作品を作るためには、拠点の維持と組織の確立、スタッフの社員化、研修制度の整備などが不可欠だ」と提案し、ジブリはスタッフの社員化と固定給制を導入して賃金倍増を目指すと共に、新人を定期採用して育成することになったのである。
p216
私が仕上部を見学して驚いたのは、ヘッドホン・ステレオで音楽を聴きながら、トレースや彩色をしているスタッフがいたことだ。/周りの音をシャットアウトして、音楽を聞きながら作業すると、確かに集中力は増すかもしれない。だが、保田さんが時折スタッフを呼んでアドバイスを与えたり、直しを指示したりする言葉や、外のプロダクションとの電話で交わすやりとりを聞くことは、彼女たちの仕事に無駄になることはない。音楽よりもよっぽど役に立つと思うのだが、とりあえず自分の仕事と関係のないことまで耳に入れて、今後の仕事の蓄積にしようという姿勢はあまり見えないのである。/トレースならトレースだけ、彩色なら色を塗ることだけと、自分が取りかかっている目先の作業にしか興味を持たないと、仕事の幅は広がっていかないと思うのだが。
p220
「老後、今の仕事をやめて、週に三日ぐらい学校で教えるのもいいかもしれないなんて考えたこともあったんだけど(笑)、やはり学校で色彩設計や仕上を教えるのは中途半端だと思いましたね。教えるよりは自分で仕事しているほうが面白い。同じ人を育てるなら、学校より現場のほうがいい。[…]」
p252
いつも考えながら続けていると、ある日突然『あ、分かった』っていう瞬間がくるの。そこで階段を一段上がれるんだけど、また横バイの日が続く。そのうち、また突然、『あ、分かった』って、ステップアップできるのよ。その繰り返し[。]
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