p31
未来を理解するうえで障害になることの一つは、テクノロジー、エネルギー、グローバル化に関する研究や出版物が概して特定の国や地域__たいていアメリカか西ヨーロッパ__だけに着目していることだ。

p78
1990 年の私がいきなり 2010 年の世界に放り込まれていれば、あまりにせわしなく時間に追われる日々に驚き、おそらく恐怖を感じただろう。

p79
時間に追われるようになると、真っ先に失われるのは、ものごとに集中して取り組む時間だ。

pp79-80
「作曲家、バスケットボール選手、小説家、アイススケーター・・・・・・そして犯罪の達人たち」を調査したところ、専門分野こそ違っても、すべての人に共通する性質が一つ見いだせた。その共通点とは、技能を磨くために長期間集中して打ち込むことが苦にならないことだった。

p54
創造性を刺激し、新しいアイデアを生み出すうえで、遊びがきわめて重要であることは古くからよく知られている。

p88
2010 年の段階ですでに、企業向けテクノロジーと個人向けテクノロジーの境界線がぼやけはじめている。会社が用意してくれるテクノロジーに頼るのではなく、自腹を切って自宅にテクノロジーを導入する人が増えてきているのだ。会社のオフィスより、自宅のテクノロジー環境のほうが充実しているケースも珍しくない。

p94
消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的になにかを生み出す人生に転換することである。

p126
2009 年、先進国の国民は平均して週 20 時間テレビを見ていた。テレビを見ることが一種の「副業」と化しているのだ。

p136
2025 年の人々は、自分の社会的地位に不安を感じているので、謙遜の美徳を実践するより、自己アピールに余念がない。

pp139-140
フェイスブックでのサミーの自己描写の仕方に関して、なにか気づかないだろうか。そう、モノの名前が延々と列挙されているのだ。MINI、iPhone、UGG、ジューシークチュール、セフォラ、ハドソン__。サミーは、どのブランドの商品を消費しているかを通じて、自分がどういう人間かを印象づけようとしている。

p141
2010 年の時点ですでに、サミーがフェイスブックに書き込んだような有名ブランドは、自分がどういう人間かを印象づけるための「世界共通通貨」になっているのである。

p179
2007 年、OKPC 財団は「ギブ・ワン・ゲット・ワン(=1台を寄付して、1台を自分のものに)」と銘打ったキャンペーンを始めた。寄付者が所定の金額を OLPC 財団に支払うと、財団が開発した低価格のノートパソコン「XO パソコン」が1台送られてきて、もう1台が途上国の子どもに寄贈されるというプログラムである。

p192
1990 年には、先進国の国民でも休暇に海外旅行に出かける人は少数派だった。

p202
このような「自分」に関する本が読まれるようになったのは、比較的最近の現象だ。昔の人は、いまほど自己分析をしなかった。

p238
ゼネラリストと会社の間には、会社がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きをかけるのと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」があった。

p263
未来が予測どおりになる保証がないことを考えれば、自分が好きなこと、そして、情熱をいだけることを職業に選ぶのが賢明だ。ましてや 70 歳になっても働き続けるとすれば、本当に楽しめる職業を探したほうがいい。

p264
未来の世界では、知識と創造性とイノベーションに土台を置く仕事に就く人が多くなる。

p268
テクノロジーが進化して、学習に関する時間が短くなったとはいえ、高度な専門技能尾を身につけるためには、やはりかなりの時間をつぎ込む必要があるという点だ。

p270
自分のやっていることに胸躍らせ、学習と訓練につきものの苦労を楽しみ、手ごわい課題挑むことにやりがいを感じてはじめて、私たちは本当に高度な専門技能を習得できる。

p272
自分らしさと個性はお手軽に身につくものではなく、努力して学ばなくてはならないからだ。

p283
弁護士や医師のような専門職にならって、ギルド(同業者組合)やそれに類する組織をつくること。オンライン上にそうした仕組みをつくる場合は、「バーチャル・ギルド」と呼んでもいいだろう。

p296
新しい専門分野に精力的に取り組んで技能を高める時期、仕事のペースを緩めて自分の人生についてじっくり考える時期、仕事を中断して勉強に専念する時期、ボランティア活動に集中的に携わる時期__こうしたさまざまな時期がモザイク状に入り組むのがカリヨン・ツリー型のキャリアだ。このキャリアのあり方は、伝統的なキャリアに比べて柔軟性が高く、ダウンシフティングのキャリアに比べて生産的な活動を続ける期間が長い。

p343
働いて給料を受け取り、そのお金で消費して幸せを感じる__この古い約束事は、もはや機能しなくなっている。

p352
仕事の世界で長く過ごすにつれて、私たちは仕事の金銭的側面に重きを置くようになり、お金を稼げる仕事が好ましい経験で、お金を稼げない仕事が悪い経験だという思考様式に染まっていく。こうしてお金を稼ぐことが仕事の最大の目的となり、そのお金で消費することを人生の目的とする発想がいっそう高まる。消費するためにお金を稼ぎ、ますます消費するという循環が生まれる。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉 | リンダ・グラットン, 池村 千秋 |本 | 通販 | Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4833420163